悪魔の島編
EP.14 グレイの選択
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になるだろうが……本題はそこじゃない」
「? じゃあ、いったい……」
要領を得ないワタルの説明に焦れたのか、グレイが尋ねると、ワタルはもったいぶった口調で言う。
「分からないか? 俺たちは『ギルドの掟を破ってS級に行った馬鹿を連れ戻して来い』とは言われたが、『兄弟子のやってる事を止めようとしている馬鹿を連れ戻して来い』とは言われてないんだよ」
「……屁理屈だな」
「屁理屈だって理屈の内だ。依頼を受ける前なら、強引にでも連れ戻したが、受けた後だしな……一度受けた依頼を反故にするのは妖精の尻尾の名折れだろ? それに……『兄弟子』に思うところが無いわけじゃないしな……」
呆れたように呟くグレイに、ワタルは言い返し、最後に誰にも――エルザにさえも――聞かれないように呟いた。
そして、その呟きにまとわりつく哀愁を振り払うように改めてグレイに問う。
「さあ、どうする? 逃げるも戦うも、お前の自由だ……選べ、グレイ・フルバスター!」
両手を広げ、大袈裟な動作をとるワタルに、グレイはもう一度呆れたように……だが、喜びの色を込めた笑みを僅かに浮かべながら答えた。
「……ホント、屁理屈もいいとこだよ……恩に着る、ワタル」
最後に礼を言うと、グレイは鋭い顔でワタルたちに背を向け、テントを出た。
その顔に満足したように頷いたワタルは、エルザ達に向き直り、準備するように伝える。
「……どうやら、グレイは戦う方を選んだようだな……エルザ、ルーシィ、ハッピー、俺たちも後を追うぞ」
「うん!」
「あい!」
ワタルの言葉に安心したのか、ルーシィとハッピーはホッとしたように顔を輝かせてグレイの後を追ってテントの外に出た。なんだかんだで、彼らもワタルの決断とグレイの答えを心配していたのだろう。
だが、エルザは何かを心配するような顔で残り、歯切れ悪くワタルに尋ねた。
「ワタル……その、いいのか、連れ戻さなくても……?」
「……ああ。兄弟子の不始末は、弟弟子がつけるべきだ、って思っただけさ」
「そう、か……」
「話は終わりか? じゃ、俺達も行くぞ」
「……ぁ」
まるで自分に言い聞かせるかのように、ワタルはエルザに答え、先にテントから出る。そんな彼の後姿に説明できない何かを感じたエルザは、無意識に手を伸ばした。
だが、既にテントから出たワタルに対して伸ばしたその手は空を切って行き場を無くし、エルザはその手をもう片方の手で包んで胸の前で組んだ。
――何だ、この胸騒ぎは? 私はいったい……何をワタルに聞こうとしたんだ……?
考えても答えは出ない。胸騒ぎの正体を突き止めようと、エルザは思考に入ろうとしたが……
「エルザ? どうした、行くぞ」
「ぁ、ああ……」
テントの
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