悪魔の島編
EP.14 グレイの選択
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「……?」
無断でS級クエストに行ってしまったナツ達を追うべく、エルザと共にハルジオン港からガルナ島へ向かう海賊船の中で、目的地を視界にとらえたワタルはふと眉根を寄せた。
ワタルの様子の変化は僅かであったにもかかわらず、エルザがそれに気付けたのは、それだけ彼らのコンビ歴が長く、互いの事をよく知っていたからだ。
「どうした、ワタル?」
「いや、なんか違和感が……」
「違和感?」
「ああ……。少し待て……」
僅かに感じた違和感。それを明らかにするために、ワタルは瞑目して臍の前あたりで手を組んで神経を集中させた。
ワタルの特技、“魂威”は自分の体内の魔力を感知、放出、操作する技術である。その応用として、彼は他の魔導士より精密な魔力探知、及び目標の魔力の解析を可能とするのだ。
因みに、彼がギルドの面々に『人間レーダー』と揶揄される所以だったりする。
閑話休題。
「――島の周り……いや、上空か? とにかく、膜のようなものが張っているな……」
「膜? 魔力か?」
「ああ。薄い膜だから、戦闘用の局所的な感知なら問題ない。だが、広範囲の感知は少し難しいな」
「そうか……なら、どうやってアイツらを見つけ出すか……」
「ま、面倒だが地道にやるしかないだろ」
片手を頬に当てて少し考え込む様子を見せたエルザに、ワタルは船の手すりに寄りかかって軽い調子で答えた。
そして、そのままなんとなく上を見たのだが……
「――ん? あれは……」
「どうした? 何か分かったのか?」
何かが飛んでいるのが見えた。
ワタルはエルザの問いに答えながら、小型の望遠鏡を出して、見てみると……
「いや、多分関係ないだろうが…………あれは……ネズミ、か?」
まだ遠いせいか、大雑把にしか分からなかったが、おそらくネズミであろう物体が空を飛んでいたのだ。
「ネズミ? ネズミが飛ぶわけないだろ」
「いや、それは分かってるけど……でも実際に飛んでるし……ほら、見てみろ」
「ああ。まったく、ネズミが飛ぶわけ…………飛んでる……」
「だろ?」
ワタルに借りた望遠鏡を覗いたエルザが絶句したのも無理はないだろう。尻尾を器用に回して飛ぶネズミなど、想像する方が無理というものだ。
「しかし、結構なでかさだぞ、あのネズミ……あ、落ちた」
未だ島との距離が遠いのにも拘らず、そのネズミの大きさに驚愕していたワタルだったが、ふと声を漏らした。
米粒位の大きさのそれが急に島へ落下したのだ。
「ちょうどいい、アイツらを探す手がかりも無かったしな。あのネズミから調べるか……虱潰しよりはマシだろ」
「ああ、分かった。そうしよう」
望遠鏡を上着のポケットにしまったワタルの提案にエルザも同
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