ポワン様は見ていた
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役目を果たすために村を発った、前の村長様。
近くに仕えていた者として、あのドワーフの方を追い出すことにどれほど苦しまれたか、知っていたから。
あの方の意思を継いで、村の門戸を広げることにさらに力を注いで。
そうすることで、いずれは彼らも戻って来やすくなると、信じて。
それでも肝心の彼には歩み寄る糸口を見出だせないまま、ここまで来てしまった。
フルートが盗まれたことすらも、私の力不足が原因。
私は目を逸らさずに、見届けなければいけない。
そんな私の罪悪感を、笑い飛ばすように。
意固地なザイルの勘違いすら、笑い飛ばして。
ドーラは、私が長い間悩み、そして解決出来ずにいた問題を、いとも容易く解決してくれました。
同じやり方をしろと言われても、私にはきっと出来ないでしょう。
あれほど頑なだったザイルの心を、他のやり方でどうすれば解きほぐせたのか、今もわかりません。
あの幼さで、どうすればここまでのことが出来るようになるのか。
不気味に思っても良いところなのかもしれませんが、私はそうは思いませんでした。
どれほどのものを、あの子は背負っているのか。
占いの結果に間違いは無いと、あの子ならきっと出来ると。
その判断が間違っていたとは思わないけれど、このことまであの子に背負わせたことは、本当に正しかったのか。
後悔しても、今さらどうにもなりません。
そして解決出来ると知っていれば、あのときの私はやはりそうしたでしょう。
私に出来るのは、私の罪と向き合うこと、そしてこのあと、出来ることを考えること。
そうして思い直した私を打ちのめすかのように、次の戦いは厳しいものでした。
戦いになるとは、思っていたけれど。
そう考えたからこそ、私たち妖精だけでは解決出来ないと、助けを求めたけれど。
あれほど強い魔物がこんなところにいるとは、想定外でした。
自分の判断の甘さを呪い、駆け付けたい気持ちと、行っても足手纏いにしかならないと押し留める冷静な判断とが鬩ぎ合い、結局はただ見詰めるしか出来ない私。
それでもドーラは、ドーラとベラとモモは、勝ってくれました。
フルートのことよりも、ただ、無事に帰ってきて欲しいと。
無傷とは言わなくとも、命だけは落とさないで、私に治すことが出来る状態で。
逃げても良いから、帰ってきて欲しいと。
役目も忘れてそんなことすら考えてしまった私を、やはり笑い飛ばすかのように。
何度か危ないと思うところもあったけれど、後から考えれば全く危なげ無く。
間違い無く、勝ってくれました。
そして、取り乱して命乞いを始めた相手に、躊躇無く止めを刺そうとするドーラ。
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