ザイルくんの厳しい現実
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レは負けたんだ。
そう言われても、しかたない。
……クソッ、妖精のヤツらめ!
自分じゃ勝てないからって、見た目弱そうな、そのくせ実は強い、こんな人間をひっぱってきやがって!!
だが、オレはこれで終わりじゃない。
この人間だって、いつまでもここにいるわけじゃないだろう。
「……返すよ。返せば、いいんだろ!?」
「そうよ、はじめから、素直にそうすれば」
勝ち誇ったように、言いかける妖精。
お前のてがらのつもりか?
フルートを取り返して、いまは勝ったつもりでいればいい。
だがオレが生きている限り、いつか!
また同じことをしても別の方法ででも、きっと思い知らせてやる!!
そう、思っていたのに。
「え?それだけ、ですか?」
チョロい妖精があっさり話を終わらせようとするのを、子供がじゃまする。
イヤな予感がした。
そして、それは当たっていた。
正義の味方のつもりだった。
妖精のヤツらにどんな目で見られようとも、自分のしていることは正しいと。
オレが正しいつもりでいたことの、全てが間違っていたと。
妖精と関係ない人間に、まっすぐにさとされて。
それでも食い下がろうとするオレに鼻で笑って、また考えさせる。
本当に、そう思うのか?
自分のことを、騙す価値のある、そんな大層なものだと本当に思うのか?
……ああ、そうだ。
オレは、馬鹿だ。
馬鹿な、ドワーフだ。
小さいのにこんなに強く賢い、美しい人間のこの人が、騙す価値がオレにあるだなんて、なんで思ったのか。
だが、それでも。
オレがどんなに馬鹿でも、あのひとは関係ない!
あのひとだけは、守り切ってみせる!
「どうして、したんですか?」
「ぼくが、クソ野郎だったからです!」
「それだけ、ですか?」
全ての罪を背負って終わらせようとするオレの目をじっと見つめる、強く賢く美しい人間の子供、ドーラ様。
……ダメだ。
オレごときが、この人に、隠し通せるわけがない。
「……それと!雪の女王様に、言われました!」
オレは、本当にダメなヤツだ。
惚れた女ひとり、守ることができない。
だけど、あのひととオレは、同じだから。
同じ罪を犯して、同じくドーラ様に裁かれるのなら。
そのときこそあのひとを庇い、守り通そう。
「う、うわああああ……ッッ!!」
「ザイルくん。おちついてください。だいじょうぶですから」
取り乱すオレを、優しく宥めてくださるドーラ様。
「ど、ドーラ、様……!!」
どうか、どうか助けてください。
オレはこのことを、どう考えればいいのか、教えてください
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