ザイルくんの厳しい現実
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夢のような、時間だった。
美しく気高い雪の女王様が、オレの腕の中で、悲しげに笑って。
オレがいるのに、こんなに近くにいるのに。
それでも、このひとの孤独を癒すことはできないのか。
「オレでは、足りないのか?」
うまく言葉を飾ることも知らず、馬鹿正直に聞いたオレに、あのひとはまた悲しく笑って。
「あなたがいれば、いいわ。でも、この世には。永遠なんて、無いの」
この美しいひとにそんなことを言わせる、どんなことがあったんだろう。
じいちゃんの洞窟と妖精の村しか知らない、狭い世界で生きてるオレには、わからない。
オレの孤独は、あのひとに救われたから。
オレもあのひとと同じく、妖精が憎いから。
せめてオレが、あのひとのかわりに。
あのひとが教えてくれた方法で、思い知らせてやる!
オレはそのあとも妖精の村に潜り込み、あのひとが教えてくれた妖精の宝、春風のフルートのありかも突き止めて。
盗みを働くようなヤツがいないのか、平和ボケしてろくに警戒もしてなくて、楽なもんだった。
まんまと、春風のフルートを盗み出した。
そしてこれもあのひとが教えてくれたように、氷の館に立てこもり。
正義の味方ヅラで妖精の手先がフルートを取り返しにくるのを、待った。
やってきたのは人間と妖精と、ネコみたいな見たことのないヤツだった。
人間は女で、まだほんの子供。
村の子供も、オレほどではないとしても、あか抜けない、やぼったいヤツらばかりだったが、それとはものが違うみたいな。
大きくなったらあのひとみたいに、もしかしたらもっと、美しくなるのかもしれないが……。
……いや!あのひとより美しくなるなんてことが、あるわけがない!
とにかくいまは、ただの子供だ。
妖精が弱っちいんだとしても、こんな子供になんとかさせようなんて、これだから妖精のヤツらは。
人間のお前にうらみはないが、うらむなら妖精をうらめよ。
ごちゃごちゃうるさい妖精を、人間がなんか言って黙らせて、妖精が最後のつもりかまた言ってくるのに言い返す。
「ザイル!後悔するわよ!」
「へっ!できるもんなら、させてみろ!」
……完敗だった。
昔は苦労したその辺の魔物も、簡単に倒せるようになって。
あのひとに目をかけられて、妖精どもからフルートもあっさり盗み出して。
強くなったつもりで、いた。
こんな子供と、ネコと、妖精に。
いいように、やられるなんて。
最初はブーメランで遠くから攻撃してきた子供が、途中で馬鹿にしたように棒に持ち替えて、
「よわすぎて、これで、じゅうぶんですね?」
なんて言ってきやがった!
だが実際、オ
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