ザイルくんの美しい思い出
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レから目をそらし、雪の女王様は言った。
「……冬は、いい。全てを、雪が覆い隠してくれる。……そう、全てを」
オレを近づけたくないんじゃないかなんて、少しでも思ったのがウソみたいに。
そのひとは、すごく、寂しそうに見えた。
「……だから、私は、妖精が憎い。春などを呼んで、この白く美しい、冷え切った世界を、醜い生命の営みで満たしてしまうもの。……お前も、妖精が憎いのでしょう?」
女王様の言ってることは、むずかしくてオレにはよくわからなかったが、最後はわかった。
たしかにオレは、妖精が憎い。
なんでこのひとは、知ってるんだろう。
オレがそう思ったのが伝わったみたいに、雪の女王様が笑う。
「お前と私は、同じ。同じ苦しみと、孤独を抱える者。誰にも理解されない、憎しみ、苛立ち、怒り。ぶつける場所は、あるのでしょう?ぶつける方法を、知りたくは無い?」
そうだ。
じいちゃんでさえ、わかってはくれなかった。
それを、このひとはわかると言うのか?
このひとも、オレと同じだと?
雪の女王様は笑顔のまま、見つめていたら吸い込まれそうな、美しい笑顔のまま。
いや、よりいっそう美しく笑って、オレに手を差し出す。
「おいで。私が、教えてあげよう。お前の怒りを、ぶつける方法も。孤独を癒す、方法も。私たちは、同じなのだから」
今までオレに、こんなにやさしく笑ってくれる女のひとは、いなかった。
こんなに美しいひとは、知らなかった。
そのひとが、なぜか今、オレに手を差し出している。
なぜ?
……オレたちが、同じだから。
オレにはそのひとの誘いに逆らう力も、理由もなく。
迷いなく、その手を、取った。
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