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ドラクエX・ドーラちゃんの外伝
ザイルくんの美しい思い出
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 物心付いた時には、じいちゃんと一緒だった。
 ときどき物を届けにくるヤツはいても、それだけで。
 じいちゃんとふたりで、他に誰かがいたなんて、考えもせずに育った。

 それが変わったのは、少し大きくなって、ひとりでこっそり洞窟の住み処を抜け出して。
 洞窟からずっと東の――今思えばたいしたことない距離だが、そのときはすごく遠くに思えた――妖精の村に、行ったとき。

 最初に会ったいけ好かない妖精のヤツは、見慣れない子供のオレに、うさんくさい顔を隠しもしなかったけど。
 村のドワーフの大人はまぎれ込んできたオレのことも、ちゃんと扱ってくれた。

「もしかして、ザイルくんかい?西の洞窟の、じいさんとこの。大きくなったな!」
「じいちゃんとオレを、しってるの?」

 オレは、知らなかったのに。
 じいちゃんも、なにも言ってなかったのに。
 何度も抜け出して、色々探検してまわるうちにやっと、ここを見つけたのに。

「ああ。家出した娘さんが赤ん坊を連れて帰ってきて、すぐに亡くなったと聞いたときは、あんな場所でじいさんひとりで、育てられるもんかと思ったが。そのあともたまに届け物に行くヤツに、話は聞いていたけれども。いやいや、元気なようで良かったよ!」

 じいちゃんの、娘。
 そのときはよくわからなかったが、オレの母親にあたる人だと、あとで知った。


 オレは洞窟に帰ると、すぐにじいちゃんを問いつめた。
 村のことを、なんで教えてくれなかったのか。
 あんないいところがあるのに、なんでオレたちは、こんなところに住んでいるのか。
 オレたちのほかにも、ここに誰かがいたのか。

 ため息をつきながらじいちゃんが言ったのは、昔、妖精の村に住んでいたこと。
 元々は妖精だけが住んでいたその村に、ドワーフも置いてもらえるようになって、その恩を返そうと研究に励んでいたこと。
 その甲斐あって新しい技術を見つけたが、そのせいで逆に、村を追われてしまったこと。
 村の便利な暮らしに慣れた娘は、早々にこの洞窟での生活に音を上げ、出ていってしまったこと。
 共に行こうと誘われたが、今さら外の世界でやり直す気も無く、ここに骨を埋めるつもりだったこと。

村長(むらおさ)様は、そうなさるしか無かったんじゃ。そうせねば、他の妖精たちの不満を、抑えることが出来なかったからの。娘を巻き込んだのはすまなんだが、わしひとりが出ていけば済むなら、わしはそれで良かったんじゃ」

 じいちゃんは、そうも言ったけど。
 オレは、納得できなかった。

 村のために頑張ってたじいちゃんが、なんで追い出されないといけない?
 なんで、オレはこんなところにいる?
 本当なら母親という人と一緒で、じいちゃんも一緒に。村で、幸せに暮らし
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