カストロプ公国建国式典
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こうだ。
人間など信用できないし、仕事は機械より遅い。
ならば、彼らの代わりにドロイドを中心にした機械に仕事をさせれば、領民を養う社会保障費などいらないではないかと。
この発言のやっかいな所は、それが正しいという一点につきる。
宇宙開拓が進み、それが当たり前のこの時代の惑星というのは、惑星そのものが資源なのである。
だから、その資源開発を機械にさせて、少数の人間によって管理するのは経済的にはまったくもって正しい。
おまけに、その管理層が人以上の能力を持つコーディネーターである。
事実、フレーゲル男爵領はこの領民売買にて得た資金でドロイドを大量購入し、資源開発を開始するとその経営は帝国屈指の水準に達する。
彼がブラウンシュバイク一門である事よりも、その領地経営の実績によって彼の問題は不問とされたのである。
代わりに、大量発生した難民問題を帝国政府が解決しなければならないというジレンマに陥ったのだが。
「まあ、この後帝国が荒れないのでしたら、フレーゲル男爵の理論も正しいのでしょうな」
ヤンの抑揚のない声に、ベンドリング中佐が笑う。
それを確信しているからこそおかしそうに。
「それを許すつもりなんて同盟政府はまったくないのでしょう?」
「ええ。
わが国にも飛び火しかねない人種問題なんてまっぴらですからね。
私個人の発言ですが、領地経営に苦しむミューゼル男爵を応援したいところですよ」
対照的なのが、グリンメルスハウゼン伯爵の代官として旧クロプシュトック領の統治を任されたラインハルト・フォン・ミューゼル男爵で、徹底的に略奪され破壊された旧クロプシュトック領の統治と急増する難民問題に頭を抱える羽目になった。
彼自身は、
「大衆に必要なのは公平な裁判と公平な税制度があればいい」
と、その核心を見抜いていたがそれ実行に移せる人材と予算が決定的に欠けていたのである。
この内乱で忠誠を誓ったミッターマイヤー・ロイエンタール・ワーレン等を使って行政の再建に乗り出そうとしても回りきれるわけも無く。
近隣海賊の討伐で宙域の安全を確保し、内乱時に大破して廃棄予定だった艦船を払い下げてもらって仮設住宅として用意してひとまずの体裁を整えたが、そこから先で躓いていたのである。
で、ここで出てきたのがカストロプ一門のマリーンドルフ家。
一人娘のヒルダを差し出し、寵妃である姉の嘆願によって彼と彼の家臣団をこき使う事によってようやく再建にこぎつけようしていた。
「ままならない世の中ですな。
正しい事が正解とは限らないなんて」
ベンドリング中佐の声から何の感情もヤンは読み取る事ができなかった。
いや、読み取りたくなかったといった方が正しいか。
なぜなら、この話
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