カストロプ公国建国式典
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その結果、外務委員会は亡命した貴族の再就職先としても働いていた。
後一つ、ヤン曰くまぶしすぎるこの場の原因ともなっていたのだが。
「公爵の周りに集まっている貴族の皆様の中に、公爵の心を射止める方はいらっしゃるのでしょうかねぇ」
完全に人事なのでヤンが気楽そうに呟くと、ベンドリング中佐も苦笑する。
カストロプ公エリザベートは女性であり、血を残すのであれば夫となる男性を必要とする。
かくして、亡命貴族達は尾羽朽ち果てたにもかかわらず、再度着飾って彼女の心をつかもうと奮迅していたのである。
そんな孔雀の群れの中に入る気はヤンは毛頭ない。
「いらっしゃらないでしょうな。
我らが建国に際して人口を絞った事実を考えれば、先は見えると思うのですがね」
その言葉にヤンが眉をひそめて、質問をはなつ。
その声に不信感が乗っているのは帝国内で起こっている情報に接していたからに他ならない。
「失礼ですが、ベンドリング中佐もコーディネーターですか?」
「あいにく、人以上の力を持つようなコーディネーターではありませんが。
コーディネーターそのものが定義されるのは公爵様の世代からでしょうな」
あえてヤンが問いただしたコーディネーターだが、人以上の力を純粋に持っている。
具体的に言うならば、喧嘩で人三人を相手にしても勝てるぐらい。
だが、裏返すとそれだけなのだ。
人三人で勝てないならば、四人、五人、六人と人を集めればいい。
近代戦というのは究極的にはそんな世界なのに、よりにもよってコーディネーターが特権階級についてしまった。
まだ兵士としてその力を振るえば戦争は変わったのかもしれないが、百万単位の人間を指揮するような艦隊戦において、人の三倍の能力というのがどれほどの役に立つか。
「という事はフレーゲル男爵の一件はご存知で?」
「あれだけニュースになれば知らぬとは言えぬでしょう」
帝国内戦の後に勝者となったブラウンシュバイク公爵は敗者の領地の管理を大部分任されて広大な領土を持つ貴族の第一人者となった。
で、事件は一族の一人であるフレーゲル男爵の治める惑星で発生した。
彼は、統治惑星内の農奴だけでなく領民全員を売却し、領内惑星から追い出したのだ。
もちろん、領民は反対し暴動が発生したが、ドロイド兵の投入によってこれを鎮圧。
百万近い人間が難民となってしまっていたのである。
そして、この事件はコーディネーター系貴族が統治する他の星系にも波及。
労働市場の暴落まで伴う大問題に発展しようとしていたのである。
「フレーゲル男爵は帝都での釈明において、領民である彼らを不良債権と言い切ったそうですよ」
「それはそれは」
フレーゲル男爵の理屈は
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