第二章 風のアルビオン
第一話 王女と依頼
[6/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
うに、豪奢なカーテンがしめられている窓に顔を向けた。
「フウ、殿下もご存知でしょう? かの“白い国”アルビオンの阿呆どもが行なっている“革命”とやらを……。きゃつらは、ハルケギニアに王権というものが存在するのがどうにも我慢がならないらしい」
アンリエッタはマザリーニに振り向くと言い放った。
「礼儀知らず! 礼儀知らずのあの人たち! かわいそうな王様を捕まえて、縛り首にしようというのですよ! わたくしは思います。この世全ての人々が、あの愚かな行為を赦しても、わたくしと始祖ブリミルは赦しませんわ。ええ、赦しませんわ!」
「そうですな。しかし、アルビオンの貴族どもは強力です。アルビオン王家は、明日にも倒れてしまうでしょう。始祖ブリミルが授けし三本の王権のうち、一本がこれで潰えるわけですな。ま、内憂を払えもせぬ王家に、存在の価値があるとも思えませぬが」
「アルビオンの王家の人々は、わたくしたちの親戚なのですよ? いくらあなたが枢機卿といえども……」
アンリエッタが勢い良く言ってのけるのを遮るように、マザリーニが声を上げる。
「しかしっ! 事実ですっ! ……しかも、あの馬鹿げた貴族どもは、ハルケギニアを統一するとかなんとか夢物語をふいております。となると、自分たちの王を亡きあと、あやつらはこのトリステインに矛先を向けるでしょう。……そうなってからでは遅いのですよ……」
どこか苦しそうな顔で言うマザリーニを見て、アンリエッタは、顔を伏せ、スカートの裾を握り締めながら、震える声で言った。
「わかっています……。だからわたくしが、ゲルマニアに嫁ぐのでしょう」
顔を伏せながら、横目でカーテンの隙間から覗く青空を仰ぎながら、アンリエッタは誰に聞かせることなく小さな声で呟いた。
「ウェールズさま……」
魔法学院の正門をくぐって、王女の一行が現れると、整列した生徒たちは一斉に杖を掲げた。しゃん!と小気味よく杖の音が重なった。
正門をくぐった先に、本塔の玄関があった。そこに立ち、王女の一行を迎えるのは、学院長のオスマン氏である。
馬車が止まると、召使たちが駆け寄り、馬車の扉まで緋毛氈の絨毯を敷き詰めた。
呼び出しの衛士が、緊張した声で、王女の登場を告げる。
「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおな―――り―――ッ!」
しかし、がしゃりと扉が開いて現れたのは枢機卿のマザリーニであった。
生徒たちは一斉に鼻を鳴らした。しかし、マザリーニは意に介した風もなく、馬車の横に立つと、続いて降りてくる王女の手を取る。
生徒の間からわっと歓声があがった。
王女はにっこりと薔薇の様な微笑を浮かべると、歓声を上げる生徒たちに向け、優雅に手を振る。
「ふ〜
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ