第21話
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味な事するはずないだろ?」
さすがの劉邦も悪趣味な事をしたとは自覚していたようだ。
しかし何らかの意図があるらしい。
もちろん、それを聞いた所で項羽の機嫌がよくなるはずがないのだが。
「真意だと? そんな事知るか!」
「そう言わずに。俺だって悪い事をしたとは思ったんだぜ? それに最後まで見てくれたじゃないか」
「う……」
映画館に入るまでは美味しい物を食べて大分機嫌が良かった項羽。その後も映画が上映開始するまで黙っていたのに、いざ始まった途端に文句を垂れ流し始めた。
それでもなんだかんだで最後まで見たのは彼女自身だ。
自分たちの元になった人物たちを映画化したものに、何か思うところがあったのは間違いないだろう。
「劉邦として項羽に送りたい言葉ってのは色々あるのさ。でも俺はクローンだし、そういうものを言うのはアウトだと思うわけだ。なら、自分で気づいてもらうしかないだろう?」
「……さっぱりわからんぞ、お前の言っている事は」
「だろうね。まぁそれがわかってたから、デートって形にしてきっかけを与えるに留めたわけだが」
劉邦はそう言って苦笑しながら肩をすくめ、怒りと困惑が6対4くらいになっている項羽の顔をじっと見つめる。
そんな視線に対して睨み返しながら項羽は言った。
「もういい。お前に期待した俺が馬鹿だった。お前と俺はもうすぐ史実通りに敵同士になるのだ。今回だって、約束を守ったに過ぎない」
「いや、そりゃまぁそうなんだが……」
「じゃあな」
どうせ帰る場所は一緒だというのに、項羽はさっさと後ろを向いて歩き出してしまった。
確かに項羽にとって最悪の映画を見て台無しにされた気分はあったが、それでもデートとしての部分は彼女の心を揺さぶるものだったのだ。
彼女もまた劉邦と同じように、自分の気持ちがいったいどういった状態にあるのか判別が付かずにいた。
そこに質問を投げかけられても、応えられる余裕などない。
さっさと帰って眠ってしまいたい、というのが彼女の本心だった。 だが……そこに追い討ちをかけるような声が後ろからかかる。
「あーもう、素直じゃねえなぁ。ま、そこも俺としてはポイントアップなんだが。でもまぁ――」
足を速める彼女に、今度は声のトーンが変わったかのような言葉がかけられた。
「忘れないでくれ。俺は、清楚も項羽もどっちも好きだ。いつだって味方になってやる」
そんな声が後ろから聞こえてきて、項羽はびっくりして勢いよく振り向いた。
後ろに立っていた男はもちろん劉邦としての雰囲気を保っていたが、彼女の耳に聞こえたのは確かに赤戸柳司としての言葉だった。
「っ!? おい、今……」
「ん? 何だ? 夜のデートをお望み
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