第18話
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赤戸柳司が劉邦であるという情報は、すぐに川神学園中に広がった。
それはある意味では項羽の暴走よりも驚きの情報だったのだが、項羽が覚醒した時の様に暴れたりせずに普通に授業を受けていたため、生徒たちにそこまでの衝撃を与える事は無かったようだ。
それでも項羽と劉邦のコンビがどんなものか気になる生徒が、度々教室を覗きに着たりする事は多かったが。
「有名人は辛いな。項羽の軍師にされちゃった大和君もだいぶ辛いと思うけど、大丈夫か?」
「いや、こういうのには慣れてるんで」
「そうなのか? どうやったら慣れるのか非常に気になるけど、予想がつくから聞かないでおくぞ」
はっはっはと笑いながら肩を叩いてくる柳司に辟易しながら、直江大和はため息をついた。
彼を自らの軍師にした葉桜清楚に呼び出されて校舎裏にある自然保存地に行く途中、何故かご機嫌の赤戸柳司とばったり会ってしまったのだ。
そして清楚の元に行く大和にずっとついてくる。
それが現在の大和が置かれた状況である。
「余裕ですね……」
「ん? 何がだ?」
「清楚先輩との私闘禁止令は出てますけど、柳司先輩には出ていません。決闘を申し込んでくる人はかなりいると思いますよ?」
現在、川神学園では葉桜清楚との私闘禁止令が出ていた。もちろん葉桜清楚の暴走を防ぐためである。
しかし劉邦の方についてはノータッチだった。それだけ彼が信頼されているのか、それとも何か別の理由があるのか。
どちらにせよ、劉邦という有名人が決闘を仕掛けられないはずがないと大和は思ったのだ。
「あー、それ結構クラスの奴にも聞かれた」
「それで、何と答えたんです?」
「その場合ガチ勝負はパスして、他のしか受けない。そう言ったのさ」
「……いいんですか? そんな事言って」
「いいのいいの。それにいいのか? 俺だって暴走するかもしれないんだぜ?」
くっくっくと笑いながらふざけてそんな事を言う柳司を前に、大和は黙り込んだ。
確かに目の前の男なら嘘を吐いてまで決闘を回避しそうだと。
情報通の大和の元には、柳司が清楚の前で戦いが嫌いとか彼女を煽ったりしたとかの破天荒な振る舞いをしたという情報が既に伝わってきていた。
そして目の前の姿を見れば、本当に戦いが嫌いなんじゃないかと思ってしまうのは無理も無い。
「とりあえず清楚の元に行こうぜ。呼ばれてるんだろ?」
「言われなくても行きますよ」
もはや一緒に来ることが確定事項になっている柳司が自分よりも先行していく姿を見て、大和は大きくため息を吐いた。
さて、そうして多くの花が咲いている自然保存地へとやってきた二人を待っていたのは、巨大なおにぎりを頬張る清楚だった。
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