第18話
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けらしい。
「まぁ聞け……俺はお前が好きなんだが、迷っている」
「は?」
「今日、項羽としてのお前を一目見た瞬間に、突然に俺の中に芽生えた想いがあった。だから俺にも……頭を冷やして冷静になる時間が必要だったのさ」
珍しくも唖然とした顔で固まる清楚を前に、柳司は苦笑しながら言葉を続ける。
「今までしばらく考えてみたんだが、その想いがどこから来たものなのか、俺にはさっぱりわからない。なにせ、まだ再会して一日二日と経っていないからな」
「……まて、再会だと? お前は何を言ってる?」
「ま、忘れてるなら仕方ないさ。昔の事だ。気にするな」
再会という言葉を使った柳司だが、清楚には思い出す事ができなかった。
まさか項羽と劉邦としての過去というわけでもないだろう。記憶の継承までしているわけではないのだから。
ならば、いったいいつ会う機会があったというのだろうか。
「さて、俺は悩んだ。こうして見るたび抱く思いは、俺自身が抱く想いなのか、項羽に対する劉邦の想いなのか、それとも……」
瞬間、柳司が纏う空気が変わる。
「『劉邦ではない赤戸柳司』が葉桜清楚を愛しているから、俺もそう思ってしまうのか」
「っ!」
劉邦とは違う自分の思いの丈を勝手に暴露する柳司。
もしこの場にそちら側の彼がいたなら胸倉を掴まれるくらいに怒るだろうか。
それを聞いている清楚の方も、項羽ではない方の彼女がいれば赤面しているに違いない。
「すまない。柳司としての感情が表に出すぎたみたいだ」
「……それで、お前は何を言いたい」
「別に、何もさ。俺が抱く混沌とした思いを伝えたかっただけだ。それがお前に振られたにしても、仕方の無い事だろう」
一目惚れが上手くいくケースなんて稀だと聞くしな。そう言って笑いながら、劉邦は項羽に近づいていく。
そして日が完全に沈みきった屋上で、すれ違いざまに項羽に告げた。
「だが、戦いを中で全ての清算を済ませたら……気持ちの整理がついた頃に改めて告げさせてもらうぞ」
「おい待て!」
顔を合わせず、足を止めず、さっさとその場を去ろうとする柳司を、清楚は急いで呼び止めた。
ショックを受けて思わず黙って聞いてしまっていたが、彼女にとっては聞き逃せない単語を柳司は口にしていた。
「戦いとはどういうことだ。何の戦いだ!」
「俺が感じている、もうすぐ始まるデカい祭りの事さ。それが俺の予想通りなら……」
王として、男として、柳司として、劉邦として。
赤戸柳司にとっての自分に対する全ての決着は、必ずそこで付く事になるだろう。
柳司の謎めいた言葉に怒りを募らせる清楚を前に、彼はやむなくシンプルな言葉で締めくくった。
「
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