第17話
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「あーやっぱりそう思われちゃうか。でも誤解だぜ? 俺は戦うのそんな好きじゃないし。勝負事は好きだけどさ」
「ふむ。そうなのかね?」
これには流石の京極もちょっとだけ食いついた。
興味が引かれるくらいには気になったらしい。
「だいたいそんな昔の事を持ち出してもしょうがないだろ? 歴史じゃ俺が勝って項羽が負けた。でもそんなもん今になって気にすることでも――」
「おい柳司、今ここで決着をつけてやってもいいんだぞ?」
いい加減に怒りを露にした清楚が、いつの間にか柳司の背後へと移動していた。
手を出さないのは、昨日暴れたばかりで九鬼の従者たちに釘を刺されたからだろう。
そんな清楚に言葉を中断された柳司は、後ろをゆっくりと振り返って言った。
「いや、もう勝負ついてるから」
「なんだとぉ!?」
清楚は柳司の襟首を掴んでぐいと引き寄せ、思い切りにらみ付ける。
そんな状況でもまるで気にしていないかのように、彼はクラスを見回しながら口を開いた。
「つまり俺が言いたいのはだな、あくまで俺たちは葉桜清楚と赤戸柳司なのであって、項羽とか劉邦とかはそんなに気にしないでくれって事だ」
柳司の言葉を聞いて、なるほどとクラスメイトは頷いた。
別に昔の記憶があるわけじゃないんだから、言われてみれば戦う理由はそんなにないかと。
「君たちの正体を気にしないと言ったのは私たちも同じだ。今は少し驚いているようだが、すぐに慣れるさ」
「そうだといいけどねぇ。皆が京極みたいになってくれる事を期待するか」
「俺を無視するなぁ! いつだ! いつ目覚めた!」
「昨日」
「なら何故昨日この俺に報告しなかった!」
襟首を掴んだままガクガクと柳司を揺すりながら清楚は言う。
確かに彼女にとっては重要な事だろう。
それでも、その正体よりも性格が変わった事の方が気になっているあたり、やはり彼女も柳司の正体についてはもう予想がついていたようだ。
「いや、本当は昨日のうちに話そうと思ってたんだけどさ。清楚は皆に説教されてるし」
「う」
「朝話そうと思ったんだけど、話があるって言っても無視されるし」
「ぬぬ」
「だからいい加減ムカついたというか、そんな感じだ」
「うぐぐぐぐ……」
清楚はなにやら複雑な顔で唸りながら、ゆっくりと柳司から手を離した。
そんな清楚の肩に手を置きながら、にっこり笑って柳司は言う。
「まぁ気にすんなよ。これからも仲良くしようぜ」
「ふざけるなぁ! 誰が劉邦なんぞと仲良くするか! 俺は項羽だぞ! 覇王なんだぞ!」
「俺劉邦じゃなくて柳司だし。よくね?」
「よくない!」
「面倒だなぁ」
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