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真剣で覇王に恋しなさい!
第17話
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楚が漫画を読み出した頃、京極は次に赤戸柳司へと話しかけた。
 ……ちなみに、柳司の席も京極の隣だった。ちょうど二人で京極を挟むような席の位置である。

「おはよう、赤戸君。随分と楽しそうだね」

「ちょっと待ってくれ。セーブする……よし」

 話しかけた京極の方を向かずにそう言った柳司はゲームを続け、セーブをして一段落経った所でようやく京極の方を向いた。
 その顔は普段の真面目そうな仏頂面でなく、ありえないくらいに爽やかな笑顔だった。

「待たせたな京極! それで、俺に何か話があったんじゃないのか?」

「最初は挨拶をするだけのつもりだったが、君も昨日とは随分様子が違うな。何かあったのかな?」

「おぉ! さすが我が友、それを聞いてくれるか。朝からずっとワクワクして待ってたんだけど誰も聞いてくれなくてなぁ。待ちくたびれてたんだぞ?」

 みんなもさっさと聞いてくれよなー、なんて遠巻きに見ているクラスメイトたちに告げながら、心底嬉しそうに笑う柳司。
 どうやら本当に話しかけてくれるのを待ちわびていたらしい。
 それを見て苦笑しながら、京極は柳司の言葉を待つ。

「うむ、実はな……」

 わざわざタメを作ってから、子供が何かを自慢するような口調で柳司は口を開いた。

「俺は劉邦なんだ! 驚いたか? 驚いただろ?」

 それを聞いた3−Sの教室付近では色々な事が起きた。
 教室中のクラスメイトが唖然とした表情で固まった。
 教室の外で様子を伺っていた川神百代まで驚いた。
 同じく教室の外にいた松永燕はなんとなく予想がついていたらしく頷いた。
 一つ離れた席に座る清楚の眉がピクリと動き、学校の裏にある山から多くの鳥が飛び立った。
 ただ一人、目の前で聞いていた京極だけはまるで変わらなかったが。

「……つまらんなぁ。もっと驚いてくれてもいいじゃないか」

「いや、驚いているよ。これでもね」

「あ、そうだった?」

「うむ。証拠というには不十分かもしれないが、周りを見てみるといい」

 京極に言われ、柳司は周りを見回した。
 彼の目に映ったのは、未だに衝撃が抜け落ちないクラスメイトたちの姿。
 それを見て、柳司もとい劉邦は大きな笑い声を上げながら納得の声を上げる。

「おぉーマジだ。いやーっはっはっは! 確かにすげえ驚いてるなぁ」

「まぁ、少しでも歴史を知っている人間ならそうなるだろうね」

 項羽と劉邦。
 その二人がどういう人物なのか知っていれば、とてもじゃないが目の前の状況は気が気ではないだろう。
 一日前までは仲良くしていた二人が、今にも戦い始めるんじゃないかと思ってしまうのも無理も無い事だった。
 しかし、そんなクラスメイトたちの様子を見て柳司は言う。
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