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真剣で覇王に恋しなさい!
第12話
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俺はグラウンドにいる連中に礼を言わねばならん」

 仮にも俺を目覚めさせた連中だ。
 俺の天下になった時には褒美でもくれてやらねばな。

「待て!」

「なんだ柳司、俺に向かって『待て』だと?」

 俺は柳司に覇気を向けるが、奴はそれを意に介さずゆっくりと拳を構えた。
 生意気にも俺に反逆しようというわけだ。

「……この俺に向かって拳を構えるか、柳司。お前自身の言葉を撤回するつもりか?」

 確かに貴様は言っていたはずだ。
 いつか俺の味方になったのと同じように、どうなろうと貴様は俺の味方になると。

「撤回するわけじゃない」

「何?」

「清楚だろうが、項羽だろうが、どっちでもいい。お前がはしゃぎすぎているなら、その頬を引っぱたいて正気に戻してやるだけだ……いつかの時の様に」

 面白い事を言う奴だ。初めて会った時を思い出すかのようだな?
 だがしかし、王を引っ叩くなどと言う奴には仕置きが必要だ。

「それにどうせ邪魔が入る。話は後回しだ」

「待っ……げふっ」

「俺が後回しと言ったのだ、お前はそこで蹲っているがいい」

 俺を止めようと手を伸ばした柳司を蹴り飛ばし、俺はグラウンドに向かって跳躍する。
 そこには驚愕の表情を浮かべる者たちの姿があった。

「驚く事は無いぞ貴様ら、俺は礼を言いに来てやったのだ。天下統一を為した時には褒美をくれてやろうとな」

「て、天下!?」

「そうとも、俺は覇王だからな」

 手始めは日本、そこを足がかりにしてこの世界の頂点に立つ。

「葉桜先輩の人格は残っているんですか?」

「勘違いしているようだが、どちらも俺に変わりない。俺は清楚であり項羽なのだ。随分長い事表に出る事は無かったが……今こうして俺は俺となった」

 それも貴様らのおかげでな。

「しかし手始めに日本を獲るにしても何から手を付けるか……政府に対して降伏勧告でもすればいいのか? いや、いずれにしても俺に付き従う兵士が要るか」

「お、おいちょっと……」

「黙れ俺の思考の邪魔をするな」

 こちらに口を挟んだ島津岳人をひょいと掴んで、学園内にあるプールの方へと高く放り投げる。
 王の言葉に口を挟むなど言語道断だ。
 しかしそれを見た他の面々も俺へと敵意を剥き出しにする。どうやら愚か者は百代や島津だけではなかったようだな。

「いいだろう。貴様ら、覇王の威光を刻み込んでやる!」

『ちょいと待ちな清楚……いや項羽』

「……まったく邪魔ばかりが入るな。その声はマープルか?」

『目覚めちまったんだね項羽、一旦帰っておいで』

 帰る? 帰るだと?
 俺の邪魔をした上にそんな的外れな事を言うとは、耄碌したか?


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