第11話
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しました。でも、文化人であることを望んでいた先輩にはショックだったと思います」
「…………」
「話を続けてもいいですか? 後日、落ち着いてからでも……」
「ううん……いいの、続けて」
大和君の言葉に、続行を望む返事を返す。
今更止める事なんて、できるはずがなかったから。
それを聴いて風間ファミリーのみんなが挙げていく理由に、反論もできなくなっていく。
名前も。
髪飾りも。
スイスイ号の事も。
全部が全部、その証拠だった。
「私が……項羽」
「一応自分たちで項羽に関する資料を集めてみた」
「こちらを見て何か気になる事はありませんか?」
クリスちゃんと由紀江ちゃんにそう言って資料を手渡され、目を通す。
そして気付いた。
強烈に目を引いて、意識をもっていったのは、とある一つの歌。
あぁ、そうだ。
これは……この歌は……
「うぅっ……」
「大丈夫っすか!?」
「先輩、保健室へ……!」
「い、いいの、大丈夫……なにか、思い出せそうだから……」
突然走った痛みに頭を抑えると、心配した皆が声をかけてくれた。
でも、思い出せそうなんだ。
何かを、何か大事な事を。
自分が誰なのかを。
いつか、こんな感覚を体験した事があった。
確かその時は、柳司くんと会ってしばらく経った頃。
一緒に、中国の勉強をしていた時のこと。
そう、この文だ。
「力は、山を抜き……気は、世を蓋う……これを読んだ時、その時に、私は……」
「垓下の歌……」
大和くんが呟いた通り、垓下の歌。
あの時も、これを読んでいて。
「時……利、あらず……騅、逝かず……」
周りにいた声なんてもう微かにしか聞こえない。
でも、違う。柳司くんが読んでいたのは……
「騅の逝かざるを……奈何にす可き……」
何かが昇ってくる。私自身では抑えられない何かが。
あぁ、思い出した。柳司くんが読んだのは、同じページの……
「虞や、虞や、若……を、奈何ん……せん……奈何ん、せん……」
あぁ、頭が痛い。
それに……意識が、反転、していくような――
「……んはっ!」
胸の内から湧き上がる歓びに、俺の口から笑い声が漏れだしていた。
そう。俺は今、長い眠りを経て表へと出てきたのだ。
手始めに……目の前の無礼者に判決を下すとしよう!
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