暁 〜小説投稿サイト〜
真剣で覇王に恋しなさい!
第二部 自分探し
第9話
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 小さい頃から、ずっと傍にいてくれる人がいた。
 どんな時も私の傍にいて、私の事を考えてくれる、とても優しい人。
 一緒にいると楽しくて、二人で笑っていたいと思える人。
 私の、一番最初のお友達。



 真剣で覇王に恋しなさい!



 赤戸柳司という男の子に出会ったのは、私がまだ一人ぼっちだった子供の頃。
 きっかけは、自分の正体を知らないという共通点だった。
 それからすぐに仲良くなって、私達は友達になった。
 義経ちゃん、弁慶ちゃん、与一くんたちから離されていたその時の私にとって、彼は唯一の友だちだった。
 それから今まで、ずっと一緒に育ってきた。
 色々な事を互いに学んで、教えあって、それに遊んだりもして。
 隔たりなんて何もない、そんな関係を築き上げてきた。

 でも、一つだけ。
 柳司くんには秘密にしている事がある。
 今は自分の正体なんてどうでもいいと言う柳司くんだけど、昔は違った。最近の私がそうであるように、自分の正体についてずっと悩み続けていた。
 そんな柳司くんがマープルに自分の正体を尋ねるのを、私は偶然に聞いてしまっていた。
 それが、私の秘密。

『ねぇねぇ、ちょっと聞きたいんだけど』

『なんだい?』

『僕の本当の名前、なんで教えてくれないの?』

『……まぁ、あんたなら別に教えても良いんだけどねぇ。清楚と一緒に教えた方が都合がいいのさ。あんただって、一人だけ抜け駆けで教えてもらうなんて真似はしたくないだろう?』

 それから柳司くんは、自分の正体については話に出さなくなった。
 幼い頃の私は彼と同じでは無くなる事を怖がっていたけど、その不安は現実にはならなかった。

 でも今思えば、私はずっと彼の枷になっていたのかもしれない。
 あの時だって私がいなければ、柳司くんはきっと自分の正体を知る事ができたはずだ。
 気にしないで聞けばいい、そう言う事は私にはできなかった。
 もう彼は、考えを変えてしまっていたから。
 私が自分の正体を知るまでは、どんなに言った所で考えを曲げない。
 柳司くんは頑固な男の子だから。

「……だから、やっぱり私がしっかりしないとね」

 自分の正体を知る。
 その為の自分探しをしよう。
 きっとそれをしていけば、柳司くんともっと仲良くなれると思うから。



 土日明けの月曜日。
 今日は朝から柳司くんの様子が変だった。

「どうしたの?」

「清楚か……なんでもない。ちょっと徹夜しただけだ」

「またなの? この前もあんなに言ったのに」

「あぁ、すまない。できるだけ気を付ける」

 柳司くんはどこか上の空な様子でそう応えた。
 思えば土日の間だってあまり姿が見えなかったし
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ