第3話
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「いやいやつーかなんで柳司がこんなとこに……って今はそれどころじゃねぇんグェッ!?」
「与一くん!?」
「おー、柳司。それに清楚先輩も。捕まえてくれてありがとさん」
与一にいきなり変な声を出させて清楚を驚かしたのは弁慶だった。どうやら、いつものように与一が何か言って怒りを買い、逃げ出したらしい。
それで廊下に飛び出してきて、俺達にぶつかりそうになったと。
納得はできたのだが、じゃあ俺が左手で掴んでいる女の子はなんなんだ?
「おにごっこだよ。与一を追いかけてたんだー」
「……そうか。手荒い真似をして済まなかった」
「別に気にしなくていいよー」
よくわからないが、榊原は弁慶に協力していたらしい。
俺が無遠慮に首を掴んで捕まえてしまった事を詫びると、その榊原という女子生徒は跳ねるようにして教室内へと戻っていった。
その姿を見送ってから、俺は与一に視線を戻す。
弁慶の力で思い切り喉が絞まったせいか、ぐったりとした様子で彼女の右手にぶら下げられている。
弁慶がやった事は俺と似ているが、首を後ろから優しくキャッチングするのと、いきなり後ろから服の襟を掴んで引っ張るのとじゃあ全然違う。
例えるなら、俺が猫を掴んでぶら下げたのに対し、弁慶は猫の首輪を掴んで引っ張った。たぶんそんな感じだろう。
いくら与一がああ見えて意外にタフでも、そんな事されたらたまらないだろうな。
「もうかなり参ってるようだし、許してやってくれないか?」
「そうだよ弁慶ちゃん。せっかくの初日なんだから、ね?」
「……んー、本当はこの後ちょっと頭を冷やしてやろうかとも思ってたんだけど、二人がそう言うなら」
与一の姿をとても見ていられなかった俺と清楚の説得が功を奏したのか、弁慶は与一を解放した。
「た、助かった……」
「次は無いからね」
「お、おおおおう、わかってるさ」
震え声で頷いている与一だが、きっとまた同じような事が起こるだろう事は想像に難くない。
まぁ、俺達がいない時に何をやっても自己責任だ。死なない程度に痛めつけられてくれ。
「ふぅ。いきなりだったからびっくりしたね」
なんとか元気を取り戻した与一が教室内にしょっぴかれていくのを見送っていると、少し驚いた顔の清楚が俺に話しかけてきた。
目の前の出来事が結構衝撃的だったらしい。
俺もその光景を作るのに一役買っている事を思うと、何とも言えない気分だ。
「あれくらいは日常茶飯事な気もするが、学校で初日からというのは確かに驚いたな」
朝礼の最中に弁慶が川神水を飲み始めたり、与一が屋上で寝てたり、何か起きそうな感じは確かにしていたが。
「幸い、ここの学校の連中は個性的な奴が多いようだ。
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