一章 希望と絶望のセレモニー
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額と額とがぶつかりそうな位置まできた時、この空気は大きく一変させられることとなる。
「ハァアア!!チェストォオ!!」
『ぬはぁぁあ!』
威勢のよい掛け声と共に額を赤くした少年はサイドに激しくぶっ飛ばされた。と同時に彼の持っていた湯呑みもその手を離れ宙を舞いそしてパリンと澄んだ音を鳴らして床にその残骸を散りばめた。こう短時間にいくつも物を破壊するなんてエコノミーの欠片も感じられない部活動である。
そんなことはともかく、少年を突き飛ばしたものはというと、これがまたしても竹刀。しかし今回は遠距離からの投放されたものではなく、ちゃんとある少女に握られている竹刀であった。
「また京介さんは小春さんに言い寄って・・・なんて破廉恥なんでしょう!」
その少女は苦痛に悶える少年をまるで汚らしいゴミでも見るかのように蔑んだ目をしていた。
「・・・だ、誰もそんなことしてねぇ・・・ッウ!・・・ッガク」
そう最後の言葉を残し、少年はまさにこと切れるといった表現が的確であるかのように気絶してしまった。
さて、道場も普段通りの賑やかさをみせてきたところでこの如月学園B地区剣道部のメンバーを紹介しよう。
まず、この床で白目を剥き倒れている少年なのだが、彼は高等部2年、名前は天道京介(テンドウキョウスケ)といい、お茶や将棋などのジジくさい趣味を持つ。しかしそのような平穏な趣味とは相反して昔から何かと面倒事に巻き込まれやすいという可哀想な性質の持ち主だ。
次に京介のそばでオロオロしているこの美人は、女性でありながらこの剣道部の主将を勤めている日向小春(ヒナタコハル)である。京介とは幼い時に通っていた剣道教室で出会い、以降は彼の姉のように接してきている。学業もにおいても優秀でこの広すぎる校内でもかなりの知名度を誇っている。
そして一見小学生にしか見えないこの少年は海上ミナト(ウミカミミナト)。これでも一端の高校一年生である。ミナトは入学して間もないころ不良に絡まれていたところを助けてもらって以来、彼に付きまとうようになった。
最後に小春に引っ付いて離れないこの女の子は一年生の神崎サラ(カンザキサラ)。周囲には自称小春の付き人と言っており彼女の身の周りの世話はしたがる自己中心的な性格の持ち主である。その愛しの小春と親しい京介にはいつも嫉妬の矛先が向かうが当のサラは京介に対する罪の意識を感じることは皆無である。
長々となってしまったが以上がこのB地区の剣道部のメンバーである。彼らは毎日毎日剣道の稽古後はこのような茶番を繰り返す独自の青春の形を謳歌しているのであった。
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