一章 希望と絶望のセレモニー
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の商品である高級芋ようかんを全て床に食わしてしまったようだ。
「ちょっと京ちゃん!またミナト君こんなことさせて!たまには自分でしなさい!」
給湯室からまるで母親が子供を叱るような口調の言葉が道場内にいる少年に向かって飛んでくる。が、彼は構わず黙々と茶をすすり続けている。
ビューン!!
「グバラッ!!」
そんな彼をめがけて一閃の『何か』がすごいスピードで向かっていき見事少年の額を直撃、意識が軽く飛ぶ。先ほどの陶器とは全く違った、『何か』がぶつかった際の鈍く重い音と彼の奇声が道場に響いた。
「もう!聞いてるの京ちゃん!」
道場入口に一人の剣道着を身につけたスラッと背の高い女性が不機嫌そうな様子でこちらを見ている。怒っているのだろうが、その姿はすごく可憐で大和撫子を感じさせるオーラがある。
「・・・バッカか貴様ァ!!」
少年はガバッと活きよい良く立ち上がりその女性を睨みながら叫ぶ。
「竹刀投げんなって散々言ってんじゃねーか!てか何でその位置から届くんだよ!」
そう、先ほど彼の額を直撃したのは剣道ではお馴染みのこの竹刀である。その衝撃は彼の額の赤みでいくらか想像が可能だろう。
「だって木刀は危ないかなって竹刀にしてあげたのに・・・」
『竹刀も充分に凶器になり得るわ!!』
「でも割りと大丈夫そう!」
『じゃあ次はお前が味わってみるか?』
「無理よ、京ちゃんには竹刀を狙って投げられる領域に達してないわ!」
『顔面狙ってたのかよ!!』
テンポの良い夫婦漫才のような会話を繰り広げつつ、少年はその女性の方へズカズカと近づいて行く。右手は痛みを押さえ込むかのように額に当てられ、左手には先ほどの湯呑みを強く握ってる。先程から黙々と飲んでいたおかげか、どうやら全て飲み終わった後に強襲にあったようだ。もしまだ中身が残っていたら悲惨で恐ろしい二次災害を被っていたかもしれない・・・
「だいたいお前は部長なんだからもっと――」
『わわわ〜先輩落ち着いて!』
少年が女性のすぐ近くまで攻め寄った時、二人の間の小さな人影が全身を使い必死に仲裁に割って入った。その挙動の一つ一つからは愛嬌のような愛くるしさを醸し出している。
「邪魔をするなミナト!こいつの天然さが人を殺める前になんとかしねぇと!」
『なによ!京ちゃんのグータラっぷりこそお説教しなきゃだわ!』
「なんだと〜!むぐぐぐ!・・・」
二人の視線と視線は火花が弾けるかのようにぶつかり合う。最初は制止しようとしていた小さな少年も次第にその圧に当てられ怯えるかのように萎縮し、元の身長よりも随分小さく見えてしまっている。その第三者を中央に残したまま対立する両者の距離はジリジリと狭まっていき、互いの
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