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戦国異伝
第百三十四話 信行出陣その十二
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後詰は戦の用意を整えている。
「紺の軍勢が東より来ています」
「それではじゃな」
「戦ですな」
「うむ、皆の者よいな」 
 羽柴は後詰の者達に言う、皆自ら名乗り出て残った生きて帰ると誓っている者達だ。その者達に言ったのである。
「これから戦になる」
「そしてその戦で」
「いよいよですな」
「そうじゃ、功を挙げるぞ」
 黒田と細川にも確かな笑みで返す。
「思う存分な」
「ははは、腕が鳴ります」
 加藤はその十字槍の刃を見上げながらその口を大きく開けて笑う。
「これで敵に虎がおれば言うことなしです」
「御主はいつも虎じゃのう」
 羽柴は加藤のその話を聞いて彼も笑った。
「余程虎が好きなのじゃな」
「はい、いつか明か天竺で虎を借りたいと思っています」
「言うわ。まあ御主なら虎を何匹でも狩れそうじゃな」
「そうしたいですな」
「さて、それではじゃ」
 今彼等は馬上にいる、そこから後ろを見てだった。
「皆長槍と鉄砲の用意はいいな」
「弓もあります」
「全て整っております」
 今度は蜂須賀と浅野が応える。
「そして我等も」
「既に心構えは出来ております」
「では何時でも戦えるな」
「さて、敵は三万でしたな」
 加藤嘉明も後ろを見て誇らしげに述べる。
「相手にとって不足はありませぬな」
「朝倉は二万、浅井殿は一万」
 秀長もいる、彼も今は戦をする顔だ。
「面白き戦になりますな」
「この功で母上とねねに錦の服をふんだんに着てもらおう」
「ですな、我等の母上にも」
「では今からじゃ」
 こう言ってそうしてだった、彼等は間も無く敵が姿を現す後ろを見ていた、後詰での戦いもはじまろうとしていた。


第百三十四話   完


                    2013・4・24
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