第百三十四話 信行出陣その七
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「頼りにならぬわ」
「宗滴殿がおられますが」
「それでもですな」
「あの家は何じゃ、宗滴がおらねばどうにもならんのか」
義昭は朝倉家への不満をさらに言う。
「義景は何をしておるのじゃ」
「相変わらず一乗谷で遊んでおられます」
「酒に能に蹴鞠にと」
「そうしたものばかりです」
「そればかりをされています」
天海と崇伝が義昭にその辺りの事情を話す。
「ご自身が出陣されようとはです」
「全く考えれはおられませぬ」
「何じゃ、それは」
義昭はその辺りの事情を聞いて口を尖らせて言った。
「それで武士か」
「はい、そうです」
「あの方は都の遊びにだけ興味がおありです」
「後は酒色です」
「それで日々を過ごされています」
「呆れた話じゃ」
義昭もこう言う程だ、義景については。
「それが武士か」
「我等もそう思います」
二人共義昭への同調を見せる。
「いや、武門にあるならです」
「やはりここは御自身が出陣されるべきです」
「さすれば必ずや織田信長を討てるというのに」
「よくはないかと」
「余ならば出陣しておるわ」
これは武門の棟梁としてであるが信長に庇護されれいる状況については何一つ思うことも気付くこともない。
「とうにな」
「それでこそ公方様です」
「だからこそ棟梁になれますな」
「これからも」
「うむ、これからもな」
義昭は二人の言葉に胸を張る、そうして。
確かな顔でだ、こう言ったのである。
「右大臣がどうなってもじゃ」
「それでもですか」
「これからは」
「うむ、余が将軍じゃ」
だからだというのだ。
「毅然として対するとするわ」
「それがよいかと」
「例え右大臣殿であろうとも」
「所詮は逃げ帰って来た者よ」
こう考えることにしたのだ、だが。
その話を聞いていた幕臣達はさらに暗い顔になる、義昭に関してこれまで以上に暗澹たるものを感じだしていた。
都は騒然としまたよからぬ者達もいた、だが。
岐阜は違った、平手は退きのことを聞いても平然としてこう言うだけだった。
「この時を見て武田が動くやも知れぬ」
「はい、あの武田が来るやも」
「そうなれば」
「美濃の東の守りを固めよ」
彼は岐阜に残っている者達に告げるだけだった。
「よいな」
「はい、わかりました」
「では犬山の城にも」
「鉄砲を多く入れておくのじゃ」
その犬山の城にだというのだ。
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