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私立アインクラッド学園
第一部 剣技
Silica's episode 1日だけの
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「ピナ……! ごめんね、恐かったよね……!!」

 珪子はピナを強く抱きしめる。
 先ほどとはうって変わり、キリトの瞳にはシリカの知る穏やかな光が灯っていたが──表情は暗かった。

「……ごめん、シリカ。君を囮にするような真似をして」

 キリトの悲痛な声は、珪子をも悲しくさせる。

「……いえ。キリトさんは、とっても強かった。だからあたし、全然怪我とかもしてないですし」

 珪子は気づけば、ピナを下ろし、キリトの手を両手で包み込んでいた。

「気にしてない……というか、気にする理由もないですよ。──キリトさんがピナを取り返してくれたのも、依頼のついでってだけじゃないって思ってます。……どうして、ここまでして下さったんですか?」

 キリトは出会った時のように、僅かに頬を赤く染めると、ボソッと言った。

「……笑わないって約束するなら、言う」
「笑いません」

 キリトは少し躊躇ってから、観念したように告げる。

「君が……妹に、似てるから」

 あまりにもベタベタな内容に、珪子は目を丸くすると、プッと噴き出した。

「わ、笑わないって言ったのに……」

 キリトは傷ついた表情で方を落とし、いじけたように俯いた。

「ご、ごめんなさいキリトさん……ッ」

 溢れる笑みを掻き消して、珪子は問う。

「キリトさん。教えてくれませんか……? 妹さんのこと」
「ど、どうしたんだい急に」
「あたしに似てるって、今言ったじゃないですか」

 キリトは少し遠い目をすると、話し始めた。

「……仲は、あんまりよくなかったよ。公立中の2年生なんだ。妹って言ったけど、ほんとは従妹なんだ。事情があって、彼女が生まれた時から一緒に育ったから、向こうは知らないはずだけど。そのせいかな……俺の方から距離を作っちゃって、家で顔を合わせるのすら避けてた。……それに、祖父が厳しい人でね。実家が剣道場だったんだ。俺はそれを継ぐはずだったんだけど……そういうのガラじゃなくて、二年で通うのすらやめちゃったんだ。じいさんにそりゃあ殴られて……そしたら妹が、自分が継ぐから叩かないで、って俺を庇ってさ。それから今も、剣道を続けてる。──それ以来、俺はずっと彼女に引け目を感じてた。本当は、他にやりたいことがあって、俺を恨んでるんじゃないかって。そう思うと、余計に避けちゃって……そのまま、俺はこの学園に入学したんだ」

 この学園は全寮制で、そう簡単に家に帰ることはできない。キリトは、結局妹と向き合えないままに、ここへ来てしまったんだ。
 珪子は一人っ子だから、キリトの言うことを完全には理解できない。しかし、何故か妹の気持ちは解るような気がする。

「妹さん、きっと、恨んでなんかないですよ。ほんとに剣道が好きだか
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