暁 〜小説投稿サイト〜
私立アインクラッド学園
第一部 剣技
Silica's episode 1日だけの
[3/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
て……。

「……シリカ」
「は、はいっ!?」

 突然呼ばれ、焦る。

「あそこ……行ってみないか?」

 キリトが指差したのは、学園内にある、花の咲き乱れた丘。珪子が今まで、存在も知らなかった丘だ。

「あの丘は、使い魔達に大人気らしいんだ。君のフェザードリラも、もしかしたらそこに──」
「行きましょう、キリトさん!」

 珪子は即答していた。
 あの素敵な花園を、もっと近くで見てみたい。キリトと、あの丘を歩いてみたい。
 キリトは驚いたように──珪子の即答に、一瞬焦ったのだろう──目を見開くと、すぐに微笑んだ。

「じゃ、行ってみようか」

 ☆∵∴☆∵∴☆∵∴☆∵∴☆∵∴☆∵∴☆∵∴☆∵∴☆∵∴☆∵∴☆∵∴☆∵∴☆∵∴☆∵∴☆∵∴☆

「うわぁぁ──っ……!」

 悲鳴ではない。珪子の洩らした、感嘆の声だ。
 丘に揺れている花たちは、遠目に見ても可憐で、可愛らしかった。しかし、近くで見ると、さっきよりずっと──素晴らしかった。
 珪子がうっとり見とれていると──。

「──シリカ」

 キリトの声がした。その響きはとても真剣なものだった。

「は、はいっ!」
「君はいつでも逃げられるように、準備しておいてくれ」
「……逃げるって……何から逃げるんですか?」

 珪子を一瞥したキリトの手には、いつの間にか剣が握られていた。
 何故、モンスターの出ない校内で剣を構える必要があるのだろうか。そんな珪子の心情を解したのか、キリトは低く言う。

「ここ、出るんだよ……モンスター」

 ──えっ。
 ここは学園内。モンスターは通常、森などに行かなければ出なかったはずだ。
 だがしかし、キリトが嘘を言っているようにも見えない。

「……わかりました。でもキリトさん、どうして学園内にモンスターが?」
「この丘から外には出ないだろうけど……。ここは、アインクラッドが建つ前から──元からあったんだ」
「……元から?」
「アインクラッドができたのは、そんな昔のことじゃないだろ?この学園を建てる時に、茅場──じゃなくて学園長の奥さんが、『この丘は綺麗だから、残しておこう』って提案したんだ。それでこの丘はなくならずに、元のままになってる」

 珪子は少し、素敵なお話だな、と思った。

「……本当に元のままだから、元からいたモンスターもそのままなんだ。──ところでシリカ。剣の授業、真面目に受けてる?」
「なっ……」

 珪子は顔を真っ赤にした。

「受けてるに決まってるじゃないですか! 大抵の授業はしんどいけど、剣は楽しいから、風邪ひいたって出ますよ!」
「それには激しく同意だな。──とにかく、それなら大丈夫だ。ここはそんなに強いモンスターなんて出るはずないから」
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ