第一部 剣技
Silica's episode 1日だけの
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て……。
「……シリカ」
「は、はいっ!?」
突然呼ばれ、焦る。
「あそこ……行ってみないか?」
キリトが指差したのは、学園内にある、花の咲き乱れた丘。珪子が今まで、存在も知らなかった丘だ。
「あの丘は、使い魔達に大人気らしいんだ。君のフェザードリラも、もしかしたらそこに──」
「行きましょう、キリトさん!」
珪子は即答していた。
あの素敵な花園を、もっと近くで見てみたい。キリトと、あの丘を歩いてみたい。
キリトは驚いたように──珪子の即答に、一瞬焦ったのだろう──目を見開くと、すぐに微笑んだ。
「じゃ、行ってみようか」
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「うわぁぁ──っ……!」
悲鳴ではない。珪子の洩らした、感嘆の声だ。
丘に揺れている花たちは、遠目に見ても可憐で、可愛らしかった。しかし、近くで見ると、さっきよりずっと──素晴らしかった。
珪子がうっとり見とれていると──。
「──シリカ」
キリトの声がした。その響きはとても真剣なものだった。
「は、はいっ!」
「君はいつでも逃げられるように、準備しておいてくれ」
「……逃げるって……何から逃げるんですか?」
珪子を一瞥したキリトの手には、いつの間にか剣が握られていた。
何故、モンスターの出ない校内で剣を構える必要があるのだろうか。そんな珪子の心情を解したのか、キリトは低く言う。
「ここ、出るんだよ……モンスター」
──えっ。
ここは学園内。モンスターは通常、森などに行かなければ出なかったはずだ。
だがしかし、キリトが嘘を言っているようにも見えない。
「……わかりました。でもキリトさん、どうして学園内にモンスターが?」
「この丘から外には出ないだろうけど……。ここは、アインクラッドが建つ前から──元からあったんだ」
「……元から?」
「アインクラッドができたのは、そんな昔のことじゃないだろ?この学園を建てる時に、茅場──じゃなくて学園長の奥さんが、『この丘は綺麗だから、残しておこう』って提案したんだ。それでこの丘はなくならずに、元のままになってる」
珪子は少し、素敵なお話だな、と思った。
「……本当に元のままだから、元からいたモンスターもそのままなんだ。──ところでシリカ。剣の授業、真面目に受けてる?」
「なっ……」
珪子は顔を真っ赤にした。
「受けてるに決まってるじゃないですか! 大抵の授業はしんどいけど、剣は楽しいから、風邪ひいたって出ますよ!」
「それには激しく同意だな。──とにかく、それなら大丈夫だ。ここはそんなに強いモンスターなんて出るはずないから」
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