第一部 剣技
Silica's episode 1日だけの
[1/7]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「ピナー!! どこにいるのー!?」
私立アインクラッド学園中等部2年の少女、綾野珪子は、声を張り上げて叫んだ。
珪子はカスタマイズした制服の赤いスカートを揺らし、その場にしゃがみ込んだ。アインクラッドの制服は、中等部2年から色のカスタマイズか可能なのだ。
「どこ行っちゃったの、ピナ……」
珪子は半ば今にも泣き出しそうな顔で項垂れた。
綾野珪子は、野生のモンスターを飼い慣らし、使い魔とする者──アインクラッドでは珍しい?ビーストテイマー?だ。いつも彼女の傍らに付き添っている相棒モンスター、?フェザードリラ?ピナは、珪子が学園のアイドルであることを知らしめている。
しかし、今朝からそのピナの姿が見あたらないのだ。
「あら、どうしたの? アイドルちゃん」
前方から声を掛けられ、ゆっくりと顔を上げる。自分の赤い髪を指に巻いて弄んでいる女性が立っていた。
珪子はキッと睨むと、その相手の名を口にする。
「……ロザリアさん」
ロザリア。アインクラッド高等部3年で、珪子によく嫌がらせをしてくる女。
「中等部校舎に何の用ですか? 言っておきますけど、あたしは貴女と話していられるほど暇じゃあありませんから」
ぷいっ、と顔をそむけ、ロザリアの反対方向へ歩き出した珪子だったが、ロザリアはまだ解放する気がないようだった。
「あらあらシリカちゃん、いつもの使い魔はどうしたの? 死んじゃった?」
「……違います。今はいない、それだけです」
「ふぅーん、使い魔にも愛想尽かされちゃったのねぇ」
「──ッ!」
珪子は猛烈な怒りを覚えた。
腰のタガーを抜きそうになる寸前で、ぴたりと止めた。
「……言ったはずです。貴女と話している時間なんてないし、そもそも話すこともありません!」
珪子は無我夢中に走り出した。
──なんであんな、酷いことが言えるの!
──ピナ、一体どこに行っちゃったのよ!
色々な感情が渦巻いて、それが雫へと形を変え、目から溢れた。──と、校舎の角を曲がるところで、なにかとぶつかった。
「きゃっ!」
「うわっ!?」
珪子はそのまま尻餅をついた。
顔を上げると、知らない男の姿があった。どうやら珪子は、この人とぶつかったようだ。
「大丈夫?」
男はそう言って、珪子に手を差しのべた。中等部の制服を着ている。色は黒。胸元には、3年生の証である、金の小さなバッチが付いていた。男──と言うよりは、少年、と言うべきか。
珪子は「すみません」と一言、少年の手を取り、立ち上がった。
少年とバッチリ目が合う。
少年の長めな前髪から覗く両眼はナイーブで、深い夜空のよう。線の細い顔からは、どこか少女めいた印象も受ける。
「ど、ど
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ