十三日目 十二月三日(土) 中編
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キャスターだからってな。武術が使えないなんてこたぁねぇんだよっ」
「ほんと、あなた面白いわねっ」
キャスターが更に何かを唱えると、三叉の槍の前に厚い水の壁が現れた。
(この壁は、相手の攻撃はせき止め、こちらの刃は擦り抜けれるようにしてある。さぁ、どうするよ。気付いた時はもう遅いぜ?)
降下するセイバーが獲物を狙う鷹だとしたら、波に乗って迎え撃つキャスターは、獲物目がけて加速する大鮫だ。人在らざる二人のサーヴァントは、獣の力のごとき凶暴な勢いで、今まさに激突する。
「エインへルヤルっ!」
セイバーが力強く叫んだ刹那、剣が二回りも大きくなり、眩いばかりの紫の光が迸った。
キャスターの武人としての鋭敏な感覚が、危険を感じ取った。敵の剣を防ぐ筈の壁は、何故か効果を失い、敵を貫く筈の槍は敵に弾かれた。水の壁をすっと紫に輝く剣が貫通してきた。
キャスターは、自らに魔法の光弾を当てる強引な回避を行い、セイバーの刃を、間一髪で避けた。セイバーの紫の刃が、キャスターが今さっきまで居た水柱を事も無く切断する。必勝の一撃がお互い不発に終わり、両者が共に距離を取る。
「へっ、やるじゃねえか。だが、解ったぜ」
キャスターが三叉の槍を構えながら、心底楽しそうな顔を浮かべる。
「剣を持ち、天駆ける乙女。そしてエインへルヤルとくりゃあ、該当するのは一つしかねぇ。天の宮なるヴァルハラを治めし、片目の最高神オーディンの娘。死者をヴァルハラへと導く天駆ける戦乙女ヴァルキューレ。それがあんたの正体だ」
「まぁ解って当然でしょうね」
セイバーもまた、剣と盾を構えながら戦いを楽しんでいる様子だ。真名を看破されても、動揺する素振りは微塵も無い。
「でも、私もあなたの正体に思い至ったわ」
セイバーが鋭い目つきのまま、微笑を浮かべる。
「水を操る力に、巻貝、三叉の槍とくればね。ちょっと頭を働かせれば簡単よ。オリュンポス十二神の海を司るポセイドンの息子。深海の黄金宮殿に住み、波を操る法螺貝を持つ海の守り手トリトン。そうでしょう?」
「へぇ、やるじゃねぇか。けど俺はあんたの宝具の性能も、見えたぜ」
キャスターが三叉の槍を掲げる。槍が水色に輝き出す。セイバーがそうはさせじと、飛び掛かる。
「エインへルヤルとは、ヴァルキューレが天へ連れ行く死した戦士の事。その名の通り、致命的なダメージを敵に与えられるんだろうよ。おまけに防御手段も無効化するようだしな。だがな」
セイバーが再び真名を解放し、死の力を付加された紫の剣がキャスターに迫る。
「おまえは、剣を持ったまま勝負を仕掛けて来た」
キャスターが、波に語りかける。キャスターが、波の力を補助として、迫るセイバーから高速で退避する。
「防御も無効化し、当たれば敵を倒せるんだったら、手に持ち続けてる必要は無い
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