第9局
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って?」
「うん!私が間違った手を打つとヒカルはすぐにそこを攻めてくるの。だから布石で間違っちゃうと、あっさり勝負がついちゃうから悔しいの。でも最近はヒカルにも結構ほめられるんだー。布石はしっかりしてきたって。」
「ここまで打てるのだからな。たいしたものだ。中盤のこの手からだな。白のこのツケで左辺が割られてしまったな。」
行洋の指摘に、あかりはうなずく。
「うん。ツケられるまで気がつきませんでした。」
「そうだな、この手を打たれるとまずい。だから、一手戻すと、ここは、こう受けておかなければならなかった。」
「そっかー、そうしておけば、まだまだ差を詰められることもなかったんだー。」
検討が一通り終わったところだった。行洋が問いかけた。
「藤崎くんは囲碁の大会には出ないのかね?見かけたことはないと思うのだが。」
アマチュアの大会でも上位に入るような面子は、プロと顔を合わせることも多かった。多くのアマチュアの大会では大概プロが参加して解説などを行うのだ。強い子がいれば、当然話題になる。これほど打てるのに、今までまったく名前を見る機会がなかったのが、行洋には不思議だった。
「えー、私なんか全然ですよー。この間塔矢君にもあっさり負けちゃいましたし。」
そう言って、苦笑いするあかり。普段ヒカルたちとしか打たないあかりは、自分のレベルに全く気が付いていなかったのだ。
「いやいや、アキラ君じゃ基準にならないよ。そうだ、そのときの1局、並べることはできるかい?俺も先生も残念ながら見てないんだよ。」
そんな緒方の問いかけにも、あっさりと答えるあかり。
「あ、いいですよ。じゃあ、碁笥借りますね。」
と、石を並べていく。
「この辺までは結構打ててたんですけど、ここで間違って後手を引いてしまって…。で、その差を詰められずに後は寄せでも損して、そのまま終了って感じです。」
テンポよく並べていくあかりに、思わずうなり声を上げる緒方。
「いや、ここまで打てれば立派なもんだ。終盤こそ多少甘い点が見られるが、アマチュアの大会ならかなりいいところまでいけるだろうに。」
「そうですか、へへ。そう言ってもらえるのは嬉しいです。」
このとき緒方が考えていた大会は、大人も交えてのアマチュアの一般の大会だ。これだけの腕があれば、都の代表クラスともいい勝負ができると緒方は見ていた。それに対して、あかりの頭に思い浮かんだのは、何度かヒカルに薦められたこともある子供囲碁大会だった。ヒカル自体がアマチュアの大会に疎いこともあり、あかりもあまりよく分かっていなかったのだ。
「私はヒカルと打ってるのが一番楽しいから、大会とかはあんまり興味ないんです。」
そう無邪気に答えるあかりだった。
「この1局は検討はしたのかね?」
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