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ドラクエX主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
一部:超絶美少女幼年期
三十五話:桜咲く旅立ちの日
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楽しかったわ。私、あなたのこと、絶対に忘れない。たいしたことはできないけど、これ。持っていって」
「ありがとう、ございます。わたしも、ベラさんのこと。わすれません」

 小さくても桜が見られるこの枝が、たいしたこと無いなんてことは、無いのに。
 もっと、明るい感じで別れられると、思ってたのに。

 桜が、いけないんですよ。
 元日本人には、この花は、特別過ぎる。

 ……でも、ベラなんだから!
 ベラと、私なんだから!
 湿っぽいのは、やっぱり似合わないよね!

 ポワン様が送る態勢に入ってくれてるのを確認して、思いっきり笑顔を作って、言います。

「つぎにあうときまでには、そそっかしいの。なおってると、いいですね!」
「なっ!?き、昨日は、お姉ちゃんとか、言ってたくせに!」
「おぼえて、ないです!」
「もう!こんな時ばっかり、子供ぶって!」
「だって、こどもですから!」

 言い合う私たちにも微笑みを絶やさず、ポワン様が言います。

「さあ、もうお別れの時です。ドーラ、それにモモも。どうか、お元気で」
「ドーラ!モモも、元気でね!」

 ポワン様の魔法の光に包まれて、姿のぼやけ始めたふたりに、応えます。

「おふたりも、おげんきで!かならず、また、あいにいきますから!」

 言い終わらないうちに視界が真っ白になり、眩しさに目を閉じて。


 目を開けたら、地下室でした。

 暖かい風が吹く妖精の村とは違う、ひんやりとした、地下室。

 それでも、今朝までとは違い、少しだけ春の温もりを感じるような。
 妖精の村から少しだけ、風が吹き込んだとでもいうように、花びらが一片(ひとひら)、舞い落ちます。

「……かえって、きちゃいましたね」
「……ミャー」

 ベラがくれた桜のひと枝を握りしめ、こちらの世界で唯一、この経験を共有できたモモに、声をかけます。

 色々あったけど、楽しかったなあ。

 途中おかしな展開が、あったような気もしなくも無いが!
 最後は、綺麗に終われたし!

 これから、ラインハットだけど。
 そこではきっと、一番辛いことが、あるけど。
 でも、絶望しか無いわけじゃないから。
 たぶん、頑張れる、かな。

「モモ!いきましょうか!」
「ニャッ!」

 気を取り直して明るく言う私に、同じノリで応えてくれる、モモ。

 この子もきっと、辛い目に遭わせてしまうけど。
 今、手放したら、それだけじゃなくて。
 人間の子供に苛められてたのに、それでも心を許してくれたのだろう、私に。
 棄てられたという辛い目にも、遭わせることになる。

 どっちがいいかなんて、本当のところはわからないけど。
 私は、私がいいと思うように。

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