序章
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男性がいた。歳だけではなく身なりもほとんど代わりない、全く同じ学生服を着ている。大きく違っているのは手に握られた長さがその人物自身の身長と大差ないような大弓、背中に背負われている矢を十本ほど入れた矢筒、そして女子のように長く、留め具で一纏めにされている銀の髪くらいだろう。
「君すばしっこいからさぁー回り込むの苦労したんだよ?でもまぁ僕の視界に入ったら確実に射抜けちゃうから問題ないんだけどね?ふふふ」
顔にかかる前髪を掻き上げながら悦に入ったような口調、不毛で一方的な話を続ける様子から彼の普段からの人物像が少し伺える気がする。
「…うるっせーなキザミ・・・てめぇの馬鹿みたいな笑い声なんとかなんねぇのかよ。頭に響いてウザイんだよ・・・」
息を荒げ前かがみの体制になりつつも少年は恐怖とは対極の力強い眼差しを真っ直ぐそのキザミと呼ばれる男に向けていた。その眼差しは例えるなら大和の魂を持つ侍のように芯をしっかり持ったものだ。とたんにそれを受けたキザミの顔からスゥーっと笑み消えた。先ほどのご機嫌さからは想像もできないような、まるで万物を見下したそんな冷たい顔つきへと変わる。
「お前なに言っちゃてんの?俺が・・・馬鹿・・・だと?調子乗ってんじゃねぇぞこのド底辺がァ!!」
彼の中の怒りスイッチを押してしまったのか、キザミは声を大きく荒げ怒鳴り散らすように罵声を飛ばす。
「いいか!よく聞けこのタコッ!俺は学園内でもトップクラスの学力!弓道に関しては日本一!いやもう世界一と言っても過言じゃねぇ!!そんな俺に対してお前みたいな三下がなに抜かしてんだ!!」
「・・・いや、馬鹿だよお前・・・」
罵声のマシンガンを遮るかのように少年が口を挟み込む。
「一発当てたくらいで何油断してんだよ?確かに俺はこの怪我じゃ全力は出せない。けどな?それでも弓道部のお前となら近接戦では負ける気がしねぇ。弓道部がのこのこ前戦に出てきてんじゃねぇよ・・・」
そういうと少年は両手で竹刀を体の中段付近で構える。凛とした立ち姿、しかし背中の痛みのせいか額には汗がにじみ息もまだ少し上がっている。それでも彼の姿は実に勇ましかった。
「・・・いくぞ!キザミ!ハァァアア!!」
叫び声と同時に少年は地面を強く蹴り出し一気にキザミとの距離を詰める。そのスピードから彼が重傷人だとは微塵も感じられないほどキレのある素早い動き、それでいてどんな反撃にも対応できそうな柔軟さを兼ね備えた猛進だ。
「喰らえキザミ!!」
少年の竹刀がキザミに振り上げられたその瞬間、キザミの顔に再び笑みが戻った。しかもそれは少年を嘲笑うような少し恐怖や狂気を含んだようなものだった。
「馬鹿はお前だよ、この馬鹿」
「・・・・・・グッハァッ!!?」
少年が
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