彼が辿る道の先
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・・」
「ありがとう・・・・でも、その願いを応えてあげる事はできない。」
この答えが分かっていたのか、さほど驚かず黙って聞く。
「どうして、ですか?」
「俺はこの手で何人もの人を殺めてきた。
誓ったんだ。
幾つもの命を俺の勝手で奪っていったのだから、せめて死んだ彼らが許してくれるような世界を作るって。
華琳も俺も、進む道の過程は違えど到達する地点は一緒だ。
だからと言って、この責任から逃げて良いわけじゃない。
これは俺自身で成し遂げないと意味がないんだ。
誰かに任せて、自分は引き下がっていたら駄目なんだ。」
真っ直ぐに華憐の眼を見つめて、あの時に誓った事を話す。
数十秒くらい二人の間に沈黙が流れるが、華憐は小さく笑みを浮かべた。
「それだけの決意を持っているのなら、私の説得では揺るぎませんね。
すみません、こんな事で足を止めてしまって。
視察を再開しましょう。」
そう言って、彼女は俺の隣を通り過ぎ、街を観察し気になった事をメモしていく。
俺もこの事については何も言わず、華憐と話し合いながら待ち合わせ場所に向かう。
どうも俺達が最後の様で、着いた時には皆集まっていた。
三組とも同じ様な竹籠を抱えて。
春蘭だけやたら荷物が入っているが。
「どうしてお前達は同じ竹籠を持っているんだ?」
「知らないわよ。
私達は北郷が露商人の絡繰を壊したから、その侘びとして買ったのよ。」
「絡繰?」
この時代にはあまり馴染みのない単語を聞いて、思わず首を傾げた。
「ああ、木製の歯車を使っていてな。
かなり出来は良かったぞ・・・壊したけど。」
歯車なんて物もあるんだな。
まぁ、刀が存在するのだからあってもおかしくはない。
「私はちょうど城で使う竹籠の底が抜けていたのを思い出してな。
それで買ったという訳だ。」
「竹籠を売っている女の子ね、物凄く寡黙な子でね。
秋蘭もずっと竹籠を見つめたまんま黙り込むし、何だか空気が重くて重くて。」
月火は軽くげんなりしたような顔を浮かべている。
あまり騒がしいタイプではないが、重い空気は好きでないのだろう。
「わ、私は季衣のおみやげを入れる籠が欲しかったので、ちょうどそこに手ごろな竹籠が。」
「おや、そうであったか?
実は・・・・」
「うわぁ!!」
星が何かを言おうとする前に春蘭が急いで手で口を塞ぐ。
(あ、あとで何か奢ってやるから黙ってくれ。)
(ふふふ、では最近良さそうな酒とメンマを見つけてな。)
(分かった、買うから黙ってくれ。)
何やらコソコソしながら小声で話している。
話し終えたのか、春蘭はぎこちない笑みを浮かべ、星は星で怪しい笑み
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