第三十六話 浴衣を着てその十一
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「それだとね」
「大胆でもないのね」
「皆ティーバックだと大胆じゃないでしょ」
皆と違うから大胆になる、しかしそれが皆一緒ならというのだ。
「普通でしょ」
「あっ、そうなるわね」
「皆が体育の時にジャージで一人だけ半ズボンだったら大胆になるわよね」
「ええ、それなら」
「それと一緒よ」
「褌も皆がそうなら、なのね」
「普通になるわよ」
娘に対して話す。
「ブラジルでも女の人は皆ティーバックだっていうから」
「ブラジルだとそれが普通になるのね」
「そうよ、普通よ」
至って、というのだ。
「そうなるわよ」
「そうなのね、皆が一緒なら」
「大胆は普通になるの」
母はこう琴乃に話す、そしてだった。
何時しかだった、琴乃は下を振り向く様にして後ろを見ながらこう母に言っていた。
「あの、じゃあ」
「じゃあって?」
「若し私が今褌だったら」
「昔だったら普通だっていうの?」
「それもあるけれど」
それに加えてだというのだ。
「ティーバックだから」
「下着の線が見えないっていうのね」
「ええ、見えないわよね」
「そういえばそうよね」
「でしょ?だから昔は女の人も褌だったのね」
「はかないと何かと都合が悪いわよ」
昔でもそうだ、やはり服を汚したりする訳にはいかないのだ。
「言われてみればそうよね」
「私も今褌だったら」
「はける?実際にはけても」
「ううん、そう言われると」
「はけないでしょ、褌は」
「ちょっとね」
無理だとだ、琴乃は考えてから答えた。
「大胆過ぎて」
「そういうことよ、トランクスでも無理でしょ」
「ボクサーパンツとかもね」
ブリーフは論外だった、何となく変態的な感じがしたからだ。
「無理よ」
「男ものはってなるわね」
「そういうことなのね」
「そう、だから今はね」
はかないか今の琴乃の様に下着の上からスパッツだというのだ。
「うちの家はそうした半ズボンみたいな和服用の下着もないから」
「こうするのね」
「けれど旅館だと下着の上からだったでしょ」
「確かに。合宿の時でも」
それで胸や脚を女同士の場とはいえついつい大胆にはだけさせてしまっている先輩達に驚きもした、ついこの前の話であるが。
「そうだったわ」
「そういう時はそれでもいいの」
「普通の下着でもなの」
「そう、この浴衣は違うから」
夏祭りの時等に着る浴衣は、というのだ。
「ちゃんとしないとね」
「あの浴衣は楽だったわね」
「でしょ?だって寝る時の服よ」
それで楽でなくてどうしろというのだ。
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