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万華鏡
第三十六話 浴衣を着てその九

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「課金とか怖いから」
「プレステとかだとソフト買うだけだからな」
「それで済むからね」
 金はそこで終わりだからだというのだ。
「もうそれでいいわ」
「それがいいかもな、よく考えたら子供から金ふんだくるってな」
「ブラックよね」
「ヤクザだよ」
 弟は強く言った。
「そういう奴こそさ」
「気をつけないとね」
「それも充分にな」
 家に帰ると弟とそうした話をした、そしてだった。
 夏祭りの日にだ、琴乃は部活と塾から家に帰ると自分が言うよりも先に母から言われた、もうリビングで待っていた。
「じゃあ今からね」
「浴衣着るのね」
「お金はあるわね」
「置いておいたわ」 
 当然夏祭りで出店に使う金だ、それはもう既にだというのだ。
「何でも買えるから」
「そう、じゃあ後はね」
「浴衣ね」
「早速持って来てね、あの浴衣」
 母は娘に告げる。
「早速ね」
「それじゃあね」
「浴衣はただ着るだけじゃないのよ」
 ここでも娘にこう言う。
「綺麗に着るのよ」
「それが大事なのね」
「そう、服全体がそうだけれど」
 浴衣もまた然りだというのだ。
「任せてね、綺麗に着せてあげるから」
「じゃあ御願いね」
 母の言葉を聞いて早速だった、琴乃は自分の部屋に入って早速その白い浴衣を持って来た。白地に淡い赤の牡丹が飾られた浴衣だ。
 母はその浴衣を受け取ると娘に素早く着せた、そして帯まで締めてからこう言った。
「これでよしね」
「有り難う、じゃあ今からね」
「可愛いわよ、浴衣姿」
「そんなに?」
「皆にそう言ってもらえるわよ、後ね」
「後って?」
「まあ大丈夫だろうけれど」
 娘の腰の辺りを見ながらだった、母はこうも言った。
「今あんたスパッツはいてるでしょ」
「ええ」
「浴衣は普通の下着のままだと線が出るからね」
 はかないという選択肢もあったが今はこうしたのだ。。
「スパッツだけれど」
「スパッツの色がまずいかしら」
「そうね、浴衣が白だからね」
 だからだというのだ。
「あんたのスパッツって紺色でしょ」
「濃いのね」
 殆ど黒い紺色だ、昔から女子の体操服に使われている色だ。
「それだけれど」
「今見たら透けていないわ」
 後ろの方もじっくりと見る、本当に今はだった。
「大丈夫だけれど」
「それでもなのね」
「ちょっとしたことで透けるからね」
「濡れたらよね」
「だから気をつけて」
 娘に強く警告する。
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