成就
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エリカは生きていた。先生に回復と治癒、リクキンチャクに植え付けられた卵の排除をしてもらった。意識を取り戻した彼女は意気消沈しその日は何も言ってくれなかった。
翌日も彼女は何も言わず自室の毛布にくるまり家を出ることもなかった。その間、家事は俺がした。動こうとしない彼女の口にスープをスプーンで流し、髪を梳き、顔を濡れタオルで拭いてあげた。
そんな日がしばらく続いたある日、買い物から帰って来ると部屋に彼女がいない。寮中探し回っても見つからない。大浴場には、入れるわけがない。いつも彼女に許可を取ってもらって入っているんだから勝手に入ったら何されるか。
しかし今の時間は誰もいないはず。今なら単独潜入もできるかもしれない。カズヤ、ヘイブンへ潜入する。
……よし誰もいない。正面から堂々と入ったが何もなかった。どういう訳か個々の大浴場は純日本式でどこの旅館だよというくらいレベルが高い。ずらりと並ぶ脱衣籠の入った棚にくすみのない大きな鏡、籐の椅子に魔道式の扇風機、などの設備が充実しているのだ。
……ん?
「……こちらカズヤ、衣服を発見した。」
独り言を言いつつ見つけた衣服を手に取るとその服が朝エリカが着ていたものだと分かった。
どうやら風呂に来ていたみたいだな。心配して損した気分だ。
部屋に戻ろうと服を籠に戻したその時、脱衣室と風呂場をつなぐ引き戸が開く音がした。いきなりのこと過ぎてすぐに反応できなかったし、手にしているのがどういう訳かパンツである。わざわざパンツだけをとったんじゃない、服の間から出てきたんだ!
等と悶々としているうちに足音は近づいてくる。
ってパンツを元に戻せばいいだけではないか、何をやっているんだ俺は……。
「さて戻るか。」
「このままで?」
「そうだな、ちゃんと畳んでから……。」
いつの間にか足音は止まっており背後に人の気配がする。ゆっくり首を回して背後を見てみる。
「ねえカズヤ、籠に手が入っているけど何してるの?」
「い、いやぁ、エリカさん。探しましたよ。心配したんですから、あはは……。」
湿度100%のジト目で俺を見ないでくれ。頼むから。
「で、では、先に部屋に戻っていうぐっ!?」
慌てて手を引っこ抜いて出口に走り出すと急に首が閉り目の前がちかちかする。
「そんなに私の使用済みパンツが欲しかったんだ、へぇ……。」
「ごめ、ん、なさ……い。」
「そんなに欲しかったんなら私を襲えばいいのに。」
首が締まって息ができず、正常な思考ができない中でオレが彼女を襲っている光景がありありと浮かんできた。だが、余計なことを考えてしまったおかげでエネルギーが底を突き始め意識が朦朧としてきた。
「あれ?墜ちちゃった?」
最後
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