崑崙の章
第13話 「その前に……少し試させてもらいましょうか」
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る。
盾二から見ても、その素振りはわざとらしく見えた。
「言葉遊びに付き合うほど暇じゃないんだよ……腹の探り合いは他の相手とやってくれ」
「やれやれ……せっかく良い男と愉しめると思ったのに、残念ですね。まあ、そういうせっかちな人は嫌いじゃありませんけど」
「………………仙人って、みんな衆道なのか?」
思わず半歩退く盾二。
「失礼な! あんなムキムキマッチョの気色悪いゲテモノと一緒にしないで頂きたい!」
「…………………………俺、貂蝉の姿を見てなくて正解かもしれない」
思わずゲイで筋肉質なアメリカ人を想像して、うげっと唸る盾二。
「まあ、私の正体を見破った貴方ですし、本来は教える義理でもないんですが、特別にお教えしましょう……私達『管理者』の役目は、生まれてしまった世界の調査と調整、そして『世界自体の調和』です」
「……調査、ね。そして調整に調和……」
「ええ。この世界に限らず、いろんな世界が無限に生まれている原理はご存知ですか?」
「……人が夢想すること」
「ハハハハハ! 流石です。それに気付いているとは!」
于吉が出来の良い生徒を褒めるように賞賛する。
「そうです。多元世界の一人一人が生み出す妄想、それこそが世界を生み出す産物。つまり人自身がある意味『神』なのですよ。本人は気付く事はありませんがね」
「……当然だな。別次元で生み出したことを、その次元の本人が感知することは出来ないのだから」
「ええ。ですが、確実に生み出しているのですよ。それこそ無量大数……無限に生み出されているのです。それらの世界はすぐに消えてしまう存在のあやふやなものもあれば、強固・精密に作られ、そのまま存在しつづけるものもあります」
「弱い妄想で生まれても、世界を構築するエネルギーが足りずに、すぐに霧散してしまう……逆に強く想い、多数に認識されることで、その世界は存在が確立するものだと?」
「ええ。認識されてこそ存在が確定する。人一人の妄想のエネルギーは素晴らしいものがありますが、それだけでは世界を維持できません。多数の人がそれを観測して、それを支える妄想のエネルギーにより世界が固定されるのですよ」
「………………なるほど。立証することは出来ないが、説として頷くことは出来るな」
盾二は、そう呟いて構えを解く。
「おや? いいのですか? 警戒を解いても」
「こういう論理的な話は、一触即発でやるもんじゃねぇからな。ただし、警戒はしているさ……ところで、座ってはなさねぇか?」
「おやおや……くくく。ずいぶんと肝の据わってらっしゃる。とはいえ、私も立ちんぼで話すのに疲れましたし」
そう言って、テーブルで糸の切れた人形のように倒れていた人物に向けて手を振る。
すると、その人物は
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