崑崙の章
第13話 「その前に……少し試させてもらいましょうか」
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のですが……
『俺は元々旅人だった。だから旅に戻るだけだよ……君の手助けにはなれなかったけど、少なくとも干渉しないようには手を打った。俺のここでの目的は……今はもうないんだ』
そう言って、桔梗に微笑んだ盾二様。
その言葉に、若干桔梗の様子が変でしたけど……結局、そのまま盾二様は旅立ちの準備を始めてしまいました。
そして翌朝の今……ここで見送っているのです。
「………………」
桔梗は昨夜から無言でした。
盾二様から伝えられた一言に、なにか思うところがあったのでしょうか?
「ふん! なんでワタシまで貴様の見送りなんか……」
あら。
魏延さん、いたのですね。
「桔梗様が無理にでも見送れといわなければ、誰があのような男の為になど……(ぶちぶち)」
……聞かなかったことにしておきましょうか。
「皆、見送りありがとう。俺は西へ行った後、しばらくしたら梁州へ戻るつもりだ。機会があればぜひ梁州へ来てほしい。歓迎するよ」
「うむ……お主は、劉表殿とのこともある。近いうちに梁州へ書状を送る。是非とも同盟を組みたいものじゃ」
「……桔梗、それは劉焉へ奏上してから決めたほうがいい。これからは君の上司は劉焉になるんだ。今までのようにはいかないつもりでいてくれ」
「…………お主の言じゃ。肝に銘じておこう」
そういえば、そろそろ劉焉様が成都に御付きになる頃でしょうか?
確かに、今まで無主だった益州周辺をまとめられるようになるのですから、桔梗とて今までの様にはいかないでしょうね。
……やはり状況認識には素晴らしく長けている方ですわね、盾二様。
できれば……わたくしは貴方に仕えたかった。
でも、わたくしは友人である桔梗と共に残ることに決めています。
ですので……
「盾二様……お元気で」
わたくしはそれだけを伝えて、微笑むのです。
でもいつか……いつか、機会に恵まれたなら……
「ああ……紫苑も元気でね。君ほどの人なら、心配はしてないけど……もし何か困ったことがあれば、いつでも頼ってくれ。力になるからさ」
そう言って笑う盾二様。
その笑顔に……思わず抱きしめたくなる。
ですが、その衝動をぐっと堪えました。
別れは……笑顔で送るものですから。
「魏延さんも元気で」
「フン! さっさと行ってしまえ! 貴様など……ギャン!」
科白を全部言う前に、桔梗の拳骨が魏延さんの脳天に落ちる。
おおお……と唸る魏延さんに、わたくしも桔梗も、盾二様も苦笑している。
「璃々ちゃん……またね」
「…………………………(コクン)」
璃々は、涙を我慢するように俯いたまま、無言で頷きました。
「じゃあ皆! またな!」
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