崑崙の章
第13話 「その前に……少し試させてもらいましょうか」
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、しゃがみこんだ盾二様は、璃々を抱きしめました。
「どうしても俺は西へ行かなきゃならない。俺が目的を達成して、帰ってくることを待ち望んでいる人がいるんだ。その人たちの期待に応えるためにも、俺は行かなきゃならない」
「ずずっ……どうしても?」
「………………ああ、どうしても、だ」
「だったら璃々もいく!」
璃々は、泣き腫らした目で盾二様を見上げます。
「璃々もおにいちゃんといっしょにいく!」
「………………だめだよ。これは危険な旅なんだ。璃々ちゃんを連れてはいけない」
「だったらおかあさんといっしょに……」
「だめだ。自分の身を守れない人を連れてはいけない」
「…………………………うぅぅぅぅぅぅぅ」
少し強い口調で璃々を諭そうとする盾二様。
正直……少し驚きましたわ。
盾二様のことですから、璃々にもっとやんわりと仰られると思っていたのに……
……つまり、それほど危険なことが待っているというわけですのね。
「盾二様……」
「…………紫苑、本当にダメなんだ。例え君と一緒でも連れてはいけない。これは俺の問題だから……」
そう言って強い眼差しで私を見ます。
先程の困惑しながらも優しい眼をした盾二様ではない。
そこにいるのは……一人の武人の目でした。
(………………思っている以上に、盾二様の旅は過酷で崇高な目的があるのかもしれない)
わたくしがそう感じると、不意に桔梗の視線も感じる。
彼女も目でそう言っている。
「……璃々、離れなさい」
わたくしが静かに言うと、ビクッと身を震わせる璃々。
そしてこちらを上目遣いで恐る恐る覗こうとします。
わたくしは厳しい目のまま、無言で璃々を見つめました。
「…………………………………………………………………………はぃ」
璃々は、これ以上は無駄だと悟ったのでしょう。
名残惜しそうに盾二様の足から手を離して、わたくしの元へとトボトボと歩いてきます。
顔を俯き、その目に涙を一杯にためながら……
「…………すまないな。ありがとう、紫苑」
「いえ……こちらこそすみません。せっかくの旅立ちですのに、涙で見送るようなことになってしまって……」
「仕方ないさ……昨日いきなりここを旅立つって伝えたんだし……本当はもうしばらくいるつもりだったんだけどな」
確かに急でした。
昨晩、思いつめた顔で市場から帰ってきた盾二様。
食事に誘うと、唐突に話があると真剣な顔。
その場で、明日にはこの巴郡を出て西へ向かう用が出来たとのことでした。
あまりに唐突でしたのですけど……その眼は真剣そのもの。
口を挟む余地がないほどに、思いつめた表情でした。
ですので桔梗も何か手助けを、と申し出た
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