崑崙の章
第13話 「その前に……少し試させてもらいましょうか」
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―― 黄忠 side 巴郡 ――
「ひっく……ぐじゅ……ひっく……うっく……ふぇぇ……」
わたくしの前でずっと泣いている璃々。
その璃々は、盾二様の足にしがみつきながら今も泣き続けている。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ! やっぱやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ひしっと盾二様に抱きつきながら、再度号泣する璃々。
その様子に、ほとほと困り果てたようにその頭を撫でながらわたくしを見る盾二様。
……確かに、困りますわね。
「璃々……あんまり無理を言ってはダメよ? 盾二様も困っておいでではないの」
「やぁぁぁぁぁぁぁぁっ! おにいちゃんとばいばいするのやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「あー…………えーと…………璃々ちゃん…………」
盾二様はどうやって説得したものか困惑しておられる様子。
とはいえ、璃々の気持ちは痛いほどわかるので、どうしたものでしょうか?
「ごめんなぁ、璃々ちゃん……本当に急に決めちゃってさ。ただ、俺は旅人なんだよ……俺は目的があって旅をしているんだ。だから……」
「うっぐ……ひっぐ……やだ、やだぁ……おにいちゃん、いっちゃやだぁ……」
盾二さんは必死に宥めようとしますが、璃々はそれでも盾二様を離しません。
普段、あれだけ聞き分けの良い子なのに……こんなにも自分の感情でわがままを言う璃々を見たのはいつ以来でしょうか。
(最後にこの子が自分のわがままを押し通したのは……………………そう、あの人が死ぬ直前……)
…………………………
この子は……この子は、わたくしのために、こんなに幼い身で……わたくしのためにわがままを抑えてきたのかしら……?
そう思うと、自らが情けなく思わず涙が溢れそうになります。
「……これ、紫苑。窘めるべきお主まで涙ぐんでどうする…………」
桔梗が嘆息しながら耳打ちします。
きっと、わたくしも盾二様と離れたくないから……なんて思ったのかしら?
確かにその気持ちはないわけじゃないけど……
「仕方ないのぅ……これ、璃々や。盾二が困っておるではないか。盾二は大事な用があってここまで同行してきたのだ。わしらと一緒にいるのが目的ではないのだぞ?」
「…………………………(ぎゅっ)」
璃々は、盾二様の足にしがみついたまま顔を押し付けて聞こえない振りをしています。
……この子とて頭ではわかっているのでしょう。
自分がいくら泣いて喚いてもそれが叶えられないことに。
ですが……感情の部分がどうしても、表に出てしまっているのかもしれません。
それは、女なら誰でも覚えがあることなのですから……
「……ごめんな、本当に。璃々ちゃん……」
そう言って
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