第10話「中立」
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近噂の桜通りの吸血鬼の話なんですけど」
その言葉にハッとした。
「エヴァンジェリンか」
先に言い当てられ、アスナが「え?」と驚いた表情を見せ、ネギは「そうなんです、次にあったら殺されちゃいます!」とおろおろしている。
「……殺される?」
穏やかではない言葉に、タケルは眉をしかめる。
「あ、はい。何でもネギの血を吸おうとしたみたいで」
ネギが相変わらずバタバタとした様子でさらに付け加える。
「僕が死んじゃうくらいに大量にですよ! 歴戦の、しかも本物の吸血鬼になんか勝てませんよ。次に合ったら殺されてしまいますーー!」
ワーン、と泣き出したネギに、だがタケルは理解できないことがあったのか、質問を発した。
「なぜ、お前の血を?」
「なんでも力が封印されているのは僕のお父さんの呪いのせいらしくてそれを解呪するためには血縁者つまり僕の血が大量に必要らしいんですしかもエヴェンジェリンさんには茶々丸さんというすごいパートナーがいて次にあったら絶対に殺されてしまうんです!!」
句読点もなしに一息に言い切った。一切かまなかったことは拍手してもいいかもしれない。
――すごいぞ、ネギ。
もはや意味不明なところで内心褒めるタケルだったが、相変わらず愚図ついているネギを見て、仕方ないので先程の長い言葉を考える。
――合理的……とはいえない気もするが。
そもそも大量に血が必要なら、それこそ一度にネギが死ぬほどの血を吸うのではなく、少しずつに分けて血を吸えばいいだけのはずだ。人間の体内で血は毎日作られるのだから、そのほうが結果的に大量の血を得られる。一度で大量に必要ならすこしずつ保存して、一気に飲むという手もある。
――ほどほどに……とも言っていたわけだし殺すつもりはない、か?
結論を下したタケルは、だがそれをネギに告げようとはしない。
「ネギ。朝にも言ったが、俺はお前を手伝うことも出来ないし、アドバイスもできない」
「な!」
これはアスナだ。ネギは半ば予想していたのか「はい」と顔を俯かせている。
「ど、どうしてですか! ネギが殺されかかってるのに! タケル先輩も魔法使いってネギに聞きました。しかも、すごいって!」
――それは完全に誤解だ。
とは勿論、言わない。
「ネギ、男なら誰でも死に直面する場面が少なからずある」
「「……は?」」
いきなりの話に二人が頭にクエスチョンマークを浮かべた。
「お前のお父さんも多分。そして俺でさえ……何度も死に掛けた。ずっとそれを繰り返してきた」
「「……え?」」
アスナとネギの目が驚きに見開かれた。
「だからこそ、今の俺がこうして生きている」
「……」
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