十三日目 十二月三日(土)前編
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な子に会ったって」
響が、懐かしそうな表情を浮かべる。
「その子の事をね、公園君って、はるかは呼んでてね、しばらくはその子の話ばっかり。よっぽどだったのね。あの子、去年の今頃、少し落ち込んでてね。でも、公園君と会ったって話をし始めてからは、また明るくなったのよ」
「……そんな。むしろ救われたのは、僕の方でした」
やっと出た声は、絞り出したかのように擦れていた。
「僕は、二年前のクリスマスに嫌な思い出があって、それで結構塞ぎ込んでいたんです。でも去年、公園で森島先輩に話かけられたんです。最初、びっくりしたけど、先輩はとても明るくて、一緒に話してるうちに、もやもやしてる気持ちが薄れていって。おかげであの後、友達と楽しく過ごせたんです」
「……そうだったんだ。ふふ、そんな事聞いたら、ますます応援したくなっちゃうな」
「森島先輩には、本当に感謝しています」
「はるかはね、結構君の事気に入ってるよ。ううん、気になってるんだと思う。はるかがね、男の子に興味持つの、高校に入ってから始めてなのよ。私は、親友として、その気持ちを応援したい」
「……」
「それで、橘君って結構仲の良い女の子、多いよね。だから、君の本当の気持ち、どうなのかなって思って」
響が鋭い眼差しで、まっすぐこちらを見つめている。緊張からか、口の中に唾が溜まっていた。唾を飲み込み、ぐるぐるしている頭の中を掻き分けて、返す言葉を探す。
「……えと。今年は、過去を振り切る為にもう一歩踏み出そうって決めて。でも、色々あって、今はそのことで手一杯で。ただ、妙に気になる人も居て……。って、すみません。なんか、取り留めないですね……」
情けない返事だったから、響の顔をまともに見る事が出来なかった。
「気になる人って、絢辻さん?」
「えっと、はい……」
頭を上げる事が出来ずにいると、響のくすくす、という笑い声が聞こえて来た。
「君って、ほんと顔が正直だよね。本当にそんな感じってのが、見てるだけで伝わってきたよ。ありがとね。言い辛い事、聞いちゃったね」
(なら、はるかもまだ脈が有りそうね)
純一が意を決して顔を上げると、響の柔らかい笑顔が有った。
「さて、実はもう一つお願いがあるんだ」
「あ、はい。何でしょう」
響は、いつも学校で他愛の無い話をする時のように、微笑を浮かべている。
「ごめんね。正々堂々とは言い難いんだけど、大目に見てくれないかな」
「えっと?」
「橘君、マスターとしてあなたに勝負を申し込むわ」
微笑みながら響が言った言葉を、純一はしばらく理解できなかった。ぽかんと響を見つめていたら、急にセイバーの銀の鎧が目の前に現れた。
「下がって! もの凄い魔力よっ」
「へぇ、あなたサーヴァントだったんだ。なら、あの子を気になっちゃうのも仕方ないか」
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