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アマガミフェイト・ZERO
十三日目 十二月三日(土)前編
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ーの美しい髪がふわりと舞う。
「少し、昔話をしようかな」
何かを思い出そうとするかのように、彼女が顔を上げ、空を見つめた。
「……私はね、使命を果たす為に育てられたの。毎日が厳しい訓練。でもね、嫌ではなかった。身体動かすの、好きだったしね。だけど、気が付いたらそればかりになっちゃってたのよ」
 彼女の瞳が、潤いを帯びているように見える。けれど、セイバーは微笑んでいた。
「でもね、姉さんが教えてくれたの。人の気持ちの温かさ、かけがえのなさを」
「セイバーにも、お姉さんがいるんだ」
「にも?」
「あ、うん。絢辻さんにもね、お姉さんがいるんだよ」
「……そう。不思議な偶然ね」
(でも、絢辻さんはお姉さんの事、嫌いみたいだったな)
 セイバーが、少しの間口を噤んだ。
「姉さんは、とても素敵な人だったわ。明るくて、綺麗で、織物も上手だった。一緒にいると、悲しい事があっても不思議と元気が出たわ。でも、あまり長くは生きられなかった」
「……亡くなったんだ」
「私の生きた時代は、皆長くは生きなかったのよ。剣を振るって敵を倒し、功名を上げる。そうすれば、天国での幸せが約束される。そういう時代だったわ」
 純一が、何と答えればいいのか解らず、口をつぐむ。セイバーも、それ以上語ろうとしなかった。
「あら、また会ったわね」
「響先輩!? どうしてここに?」
 沈黙を終わらせたのは、第三者。塚原響だった。腰に手を当て、微笑を浮かべる。
「ここの海岸は、水泳部がゴミ拾いを定期的にしているのよ」
「え? じゃあ今部活ですか?」
「もう終わったわ。私だけ残っていたのよ」
「どうかしたんですか?」
「もう卒業か、と思ったらね。何だか、もう少し海を見ていたくなったのよ。……橘君は、可愛い彼女とデート?」
「え?」
 慌てる純一。セイバーも眼を丸くし、ほんの少し頬を染めた。響が微かに笑う。
「冗談よ。……橘君、ちょっといいかな。絢辻さん、可愛い彼氏君を、ちょっと借りてくね」
「か、彼氏!? 違いますっ。どうぞ勝手に持って行って下さい!」
 セイバーがむきになって否定した。純一が苦笑する。
「じゃあ、遠慮なく。橘君、あっちで、いいかな」
 響が、浜辺を指差す。
「あ、はい」

 さわぁっ、さわぁっと波が小気味良い音楽を奏でる。優しい風が頬をくすぐり、仄かな潮の香りが鼻を楽しませる。
 少し公園から離れたところで、塚原響は足を止めた。振り向いた彼女は、真剣な顔をしていた。
「あなた、公園君でしょ」
「……えっと?」
「去年のクリスマスに、丘の上の公園ではるかに会わなかったかな」
 純一は、自分の顔が強張るのを感じた。何か言おうとしたが、口からは何の言葉も出てこなかった。
「はるかがね、言ってたのよ。公園でワンちゃんみたい
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