第9話「前夜」
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、猛先生」
「おやすみ。エヴァ、絡操さん」
彼女達がその姿を闇にまぎれさせ、タケルの視界から消えた。それを認めたあと、ため息をもらす。視線を落とし、改めて闇を睨みつける。
「……本腰を入れるか」
タケルの表情からはいつの間にか色が抜け落ちていた。
白光の鱗が闇に煌き、地を砕いた。人間と同じようなサイズの体躯を捻り、タケルを切り裂こうとその太い腕に供えられた鋭い爪を振るう。人間を一瞬で噛み砕くであろう立派な牙を持つ口を開け、指向性をもった吐息が吐き出されては地が削られ、空が穿たれる。
「ふっ」
かろうじてそれらを避けたタケルはすぐさまYガンを照準、発射。3つのアンカーが放たれ、実体をもつレーザーがボスをついに捉えた。アンカーが地面に深く突き刺さり、レーザーが標的の体を十重二十重に押さえ込む。すかさずもう一度トリガーを引いて、転送を開――
「ム、ダ、ダ!」片言な日本語が耳に響く。
自由だった尾から剣山が生えたかと思えば、その尾が風と共にレーザーを切り裂いた。次の瞬間には大きな翼を広げて、空を飛ぶ。
「ち」
これでZガンを除いた全ての武器が功を奏さなかったことになる。
――こいつがボスだったか。
油断なき目で上空のボスドラゴン星人を睨みつける。グルルと獰猛な息を漏らした星人は次の瞬間にはタケルに襲い掛かる。
嵐のように振るわれるその爪をソードで弾く。攻撃の隙を見つけては刃を振るうが、鱗一枚にすら傷をつけることは敵わない。
「ふっ」
このままではマズイと踏んだタケルが何とか間合いを脱出。Xガンを乱れ撃つ。だが、そのどれもが外れ、あるいは鱗に弾かれて無為に終わる。
「……強い」
Zガンを使うという選択肢も、強化スーツを装着するという選択肢も、彼には存在しない。絶体絶命とも言える状況の中、彼はかすかに笑う。
彼は楽しんでいた。
――敵を殺すという行為に?
NO。
――敵に殺されるかもしれないスリルに?
NOだ。
――では、何に?
ただ、全力でぶつかることの出来る相手に、だ。
凄絶な笑みを浮かべた一匹の獣は遥かに強大なドラゴンに挑み、地を駆けた。
「おもしろい……あの状況で笑えるか、タケル」
我が家に帰ったエヴェンジェリンは目を閉じ、遠視をしていた。彼女の瞼の裏にはくっきりとタケルとバケモノとの戦闘が映っている。
「……」
茶々丸は興味がないのか、家事にいそしんでいる。
――さあ、次の手を見せてみろ。
エヴェンジェリンの瞼の裏では正に死闘が続いていた。
左腕を尾で切断され、だが、次の瞬間には竜種の尾と両腕の内部
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