第9話「前夜」
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には至らない。構わず大口から息を噴出する。凄まじいまでの青い息が勢い良く噴出され、タケルに襲い掛かる。
「……!」
タケルには準備が出来ていた。暴力的なまでに蓄えられた脚力を爆発させて飛び上がる。全力で飛び上がったタケルに、息は直撃を外し、またもや大地を凍らせるに留まる。
一方、飛び上がったタケルは一瞬でドラゴンの口内に到達していた。口の中に見え隠れするソードに手を突っ込み、強引に、そして腕力と切れ味にあかせて、体内から切り下ろした。
「ぐ……ギ……!」
ずず、ズズズ。いやな音を立てながら両断していく。最初に口が割れ、首が半分になり。そして最後に胴が開かれた。
ズンと大きな音を立てて斃れこむ青いドラゴン。さすがに体内から縦に両断されてはかなわないらしく、それきり動かなくなった。
「……」
感情のない目でそれを見ていたタケルだったが、空から降りてきたエヴェンジェリンに顔を向けた。
「これで終わりか?」
「……いや、まだいる」
「まだいるのか?」
呆れたような顔を見せるエヴェンジェリンに、タケルは首を横に振った。
「多分、学園都市外だ」
「……なぜ分かる?」
外には行けないせいだろう。エヴェンジェリンは頬を膨らませてすねたような表情を見せ、その様子に茶々丸が目を瞠った。
――なんだ?
茶々丸が驚いている意味がわからずに首を傾げてしまう。ついそちらに目を奪われて、黙り込む。
「……」
「……?」
急に黙り込んだ彼に「おい」とエヴェンジェリンが促し、それにより我に帰ったタケルが再び言葉を続けた。
「……今のエヴァからは肌を刺す感じがない」
自然と『エヴァ』と呼んでいることに、タケルもエヴェンジェリンも気づかず、唯一茶々丸が「!」と2人を見比べた。そんな茶々丸に注意を払うこともなくエヴェンジェリンは笑みを見せ、
「ふっ、やはり気付いたか」
晴れやかな顔で、言葉を続ける。
「確かに、さっきの竜種を貴様が倒したことで私の力はまた呪われている状態に戻ってしまった……ということは学内にはいないのだろう」
「ああ、後は任せてくれ」
なんともないように返事をするタケルに、エヴェンジェリンは少々詰まらなさそうに唇を尖らせだかと思えば、すぐに意地悪な笑みを浮かべた。
「フン、私は帰って寝る。もしも学内にモンスターが飛び込んできたら、私の睡眠を邪魔した報いだ。貴様もろとも闇に葬ってやるからな」
「わかった」
「む、ぐ……フン。行くぞ、茶々丸!」
あまりに冷静に頷かれてしまい、鼻白むエヴェンジェリンが背を向けた。それに伴い、茶々丸がタケルにお辞儀をする。
「はい、マスター。それではおやすみなさい
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