第9話「前夜」
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いわんばかりに喜色満面の笑みを浮かべた。
――かわいい。ちょっと思ってしまったことは内緒だ。運よくエヴェンジェリンも心を読まなかったようで助かった。
「それだ。やつらがこの学園に侵入してきた途端に、私の力が半分程度だが回復したのだ。お前こそなぜかわからんか?」
バケモノ退治の専門家だろう、となぜか尊大に言われてしまったタケルは首を捻らせる。
「……この学園の侵入者、しかもバケモノに対してのみ、だろうな」
「何がだ?」
「その能力を使ってもいい相手が」
「――なぜだ?」
「俺たちがバケモノ退治に使う武器には強力な威力を誇る代わりに、そういった制約がつけられていた」
――今も俺にその制約があるのかは少しわからないが。
付け加えられた言葉にエヴァンジェリンが首を捻る。
「……制約?」
「ああ、俺なら頭が吹っ飛ぶ。人間でいう死と同意義の効果を真祖の吸血鬼に与えられるとは思えないが、それなりのペナルティは覚悟したほうがいい」
念を押すように注意をしておいて、さらに付け加える。
「キミの能力が回復した理由はわからない。俺もバケモノもここでいうイレギュラーな存在だ。そのせいでその呪いとやらにも影響したんじゃないか? ……完全な推測だが」
「イレギュラーな存在?」
エヴェンジェリンが不思議そうに呟いた。が、タケルはあえてそれは無視する。
「絶対に、バケモノ以外は襲わないでくれ。ほとんどの能力を使えないエヴェンジェリンが試していい類のものではない」
タケルの言葉に、考える素振りを見せ、頷く。
「つまり、この回復した能力でバケモノ以外の生命体を襲わずにいればいいということだな?」
「ああ」
「ふっ、十分だ。少しでも憂さ晴らしが出来るなら、その制約乗ってやろうではないか!」
ハハハハハと高笑いをあげる彼女に、それに水を差すように茶々丸が告げた。
「マスター、センサーに感知。熱量、質量ともに人間サイズを遥かにしのぎます」
会話にある程度の収集がつくのを待っていたのだろうか、と聞きたくなるぐらいのナイスタイミングだった。
「ググ、ググギ。ギギガガググガ、ギガ」
いつも通りの意味不明な言語。
闇にまぎれて現れたその姿は確かに人間とは比べようもなかった。
まず、十数Mはあるであろうその巨躯。赤い鱗に人間の胴ほどに太い尾。一踏みで大地を揺るがすその四足。
鋭い目つきからは空想上最強の幻獣種と謳わせるのに十分な威圧を感じさせ、口からは火のような息が乱れ吹いている。大きな顎は人程度なら一呑みにしてしまえるほどの恐怖をあおらせて、それは確かにそこに現れた。
「ドラゴン星人ってところか?」
――さっき見た奴とは大き
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