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ネギまとガンツと俺
第9話「前夜」
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危険なそれ、気の緩み。弛緩。

 ――どうした、大分苛立っているようだが?

 直接頭に響いてきた彼女の声。

「……なんでもない」
「ふふ、そう意地を張るな。今の私は気分が良い、話を聞いてやるぞ?」
「っ!?」

 いきなり耳元で聞こえてきた声に、反射的に刀を振るっていた。だが、それは空を斬り、一度闇に溶けたかと思えば、次の瞬間にはタケルの目の前に姿を現した。

「エヴェンジェリンさんか」

 だが、タケルの言葉に、エヴェンジェリンは心底不愉快そうに言う。

「『さん』をつけるな、背筋がかゆくなる」
「だが――」

 言いかけてエヴェンジェリンが睨んでいることに気付く。

「いや……わかった、エヴェンジェリン」

 これでいいか? 尋ねると、エヴェンジェリンは満足気に頷いてみせる。どうも呼称にはこだわりがあるらしい。

 タケルがそんなどうでもいいことを思ったとき、またもや背後から一人現れた。だが、今度の人物は先程と違い、堂々と、そして礼儀正しかった。

「……こんばんは、猛先生」
「こんばんは、絡操さん」

 挨拶を返して、前方に降り立った二人を見据える。その様子にエヴェンジェリンはクッと笑う。

「……驚かないのだな」

 ――何のことだ、と考えてすぐにそれに思い当たる。先程彼女が見せた攻撃回避。闇に溶け込んだことを言っているのだろう。

「……以前に――」

 言ってもいいだろうか、と少し悩んだ末に言うことを決意。

「――別の真祖を倒したことがあるからな」
「……な、にっ!?」

 エヴェンジェリンが驚きの声をあげ、茶々丸もその目を僅かに動揺させた。だが、今の問題とは関係ない。

「お前がもし仲間を殺した俺を殺したいと思うなら構わない。だが後にしてくれ」

 今はここのバケモノが先だ、と告げて歩き出す。彼女たちをすり抜けようとして、グッと肩を掴まれた。

 タケルが予想していたよりも小さく、そして優しい手だった。

「いや、今度その話を聞かせろ。たかが人間に殺された同胞を肴にすれば上手い酒が飲めそうだ。もちろん、お前にも酒を付き合ってもらうぞ?」
「マスター、猛先生は未成年です」

 茶々丸の突っ込みは素晴らしいが、この際なので無視しよう。

「……憎くないのか?」

 問いかけるタケルに、エヴェンジェリンは首を傾げて「なぜだ?」と質問を返して言葉を続けた。 

「私は知らない同胞よりも気に入っている人間のほうが好きだ」

 明快な答えに、タケルは苦笑を浮かべて「助かる」と呟く。だが、すぐにまた怪訝な顔を見せ、尋ねた。

「それよりも、能力は使えないと聞いていたが?」

 この言葉に、エヴェンジェリンは待ってました、と
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