つぐない
とあるβテスター、恩人になる
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プ部分を握ったままナックル武器のように使用することもできるという利点がある。
そのため、チャクラムを装備するには投剣スキルの他に、クエストによって習得できるエクストラスキル《体術》が必要となる。
ところが、この習得クエストというのが曲者で、あの『鼠のアルゴ』を以ってしても、『一生恨まれる可能性があるから教えられない』とまで言わせる程の代物だったりする。
金さえ積めば自分のステータスすら売るとまで噂されている、あのアルゴがだ。
事実、これを機に今まで敬遠していたこのクエストに挑んだ僕は、完遂までに一週間もの日数を要したのだった。
その詳細は───いや、まあ、敢えて語らないでおこう。うん。
強いて言うならば、このクエストの完遂を中途で諦めれば、その後のSAO人生に関わってくる───とだけ、言っておこう。
……ちなみに。
シェイリも一緒にこのクエストを受けたのだけれど、彼女は僅か二日で与えられた課題をこなしてしまった。
この差は一体何なんだろうと軽く自信喪失しつつ、ずっと待っていてもらうのも申し訳ないということで、彼女だけ先に街へと戻ってもらうことにした。
したがって、現在、僕とシェイリは一時的に別行動を取っている。
そうして。
死に物狂いでクエストを完遂し、何とか体術スキルを習得することに成功した僕は、精神的にボロボロになりながらも帰路についた。
その道すがら、少しでも熟練度を上げておこうと、習得したばかりの体術スキルで敵を倒しながら進んでいた───その時だ。
HPゲージを危険域《レッドゾーン》の手前にまで落ち込ませた一人のプレイヤーが、僕の視界に飛び込んできたのは。
それが、彼女───ルシェとの出会いだった。
ルシェは僕の姿を見つけるなり、悲痛な声で助けを求めてきた。
その背後から迫っていたのは、二体の《トレンブリング・オックス》。第2層のフィールドに生息する巨大牛型モンスターで、肩までの高さが二メートル半にも及ぶ程の大型モンスターだ。
ターゲットの持続時間、及び追跡距離が異様に長いというのが特徴で、一度ターゲットされると振り切ることはまず不可能という厄介さを持っている。
彼女はクエストで第2層の村を巡っている最中、運悪くこのモンスターに二体同時にタゲられてしまい、減少したHPを回復することもできずに逃げてきたのだという。
窮地に立たされているプレイヤーと出会ってしまった以上、見捨てるわけにはいかない。
体術スキルを鍛えるのはひとまず後回しにして、僕は目の前の牛に向けて投剣スキルを放ったのだった。
───そして、今に至る。
────────────
「ごめんなさい、恥ずかしいところを見せちゃいましたね。もう大丈夫です!」
それから、暫く経って。
泣き止んだ彼女は、憑き物が落
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