キャリバー編
百二十七話 かくて少女は少年を見る
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闘をしながらならば……と言うより、動きながらでも行う事が出来る。
ただしこれはセオリーでは単に、近接戦闘中、あるいは中距離で戦闘している者たちが自己強化や牽制程度に行う物で、そもそも詠唱を唱えながら近接戦闘と言うのはその詠唱が早口言葉のように体に染みついて居なければ出来はしないので、大体平均して10ワード以下の低級魔法しか使用されない。しかし、現在レコンの詠唱している魔法は……既に、30ワードを超えていた。
あれほど長い詠唱と共に近接戦闘を行う等、リーファは見た事がないし、聞いたこともない。
……否。正確には、聞いた事は有るかも知れない。
よくは知らないが、上級スペルを近接戦闘中に唱え、しかも確実に成功させる魔法剣士の話ならば、何処かで一度聞いた事が有った。アインクラッドの改装攻略等に出て来た事は余りないらしいが、確か二つ名は……
そうこう考えている間に、既にレコンは最後のドワーフを突破し、巨大な氷のゴーレムの前に立っていた。持っていた大型の金づちのようなハンマーを、レコン目がけてゴーレムは振りあげ……振り下ろした。
「シス・カ・ラナリィ──」
しかしそれを再び姿が霞んで見える程の高速ステップで躱すと、レコンはその金づちの上に飛び乗り……一旦柄を踏み抜いて跳び上がると、最後のワードを唱えた。
「ティアー・オ・ルディナ!!」
直後、全ての言葉がレコンの右手に収縮し、通路全てを包む碧銀の爆光と共に、同色の小さな稲妻が瞬く。
──レコンが、右手を突き出した。
「これ、でっ!!」
伝説級魔法《ランス・オブ・オーディン》
突き出された右手から発されるは巨大な碧銀の雷で出来た槍。
文字通り。稲妻と同じ速度で発射されたそれは瞬きの間にゴーレムの体を貫き、それに一拍遅れて無数の同色の稲妻が次から次へとゴーレムの体に突き刺さり、貫き、引き裂く。
この世の全ての落雷を凝縮したような爆音と共に周囲を凄まじい光量が通路包み、一瞬視界が白く染まる。
非情に難しいクエストやダンジョンのクリア等でしか手に入らない、伝説の力を宿す魔法の一つ。
それは少年の手から爆発し……光が収まった時、少年の周囲にはゴーレムは愚か、適性エネミーの一体すら存在してはいなかった。
自分の周りに敵の居なくなった通路に、ストン。と降り立って真っ直ぐに立ち上がって少年を見て、最後の一体のドワーフを倒したリーファは茫然と呟く。
「雷槍……」
それは正しく、レコン本人すら気付かぬ間に、彼に付けられた、彼を表す記号の一つだった。
────
「そ、それじゃ、レコン、ずっとレベル上げしてたの!?」
「あぁ。俺らは手伝ってただけだ」
驚いたように、しかし小声で言ったリーファに、リョウが
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