第九話 叛乱への反旗
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一切振り返らずに適当な返事だけをよこし、とぼとぼと歩くのを辞めなかった。徳富は丸い童顔を膨れさせてむくれ、地団駄を踏んでいる。こうして見ると本当に子どもにしか見えない。
その様子を見て、瀧はため息をつく。あの助平眼鏡は、しばらく見ない間にもちっとも変わっていない。しかし、嫌いではなかった。
やがて、地団駄を踏んでいた顔の幼い女が、ようやくこちらを振り返り、ずんずんと肩を怒らせて歩いてくる。近衛師団の面々に「何があっても手出しはしないで下さい。早く負傷者を集めて、後方の陣地まで撤退をお願いします。」と命じた。若い女の言う事だが、近衛師団はその言葉に頷いて、そそくさと撤収作業に取りかかる。さっきまで圧倒的に敵を蹂躙してきた古本が尻尾を巻いて逃げ出したという事実に、ただならぬ気配は察したのだろう。一斉に退き、逃走を図る屈強な男たち、それらを庇うように立ちはだかり、こちらに向かってくる若い女。構図としては実に滑稽だ。若い女を盾にする男たち。もはや今の世界に男も女もないのだと暗に示しているかのような絵だ。
いや、そうさせているのは、「普通の人間」の理屈では説明できない自分であって、そんな人外の立場から彼らを馬鹿にしてはいけないのかもしれない。
瀧と徳富。角ばった男と、丸顔の女が、互いに相手を睨みながら、がらんとして荒廃してしまった帝都にて対峙する。
「………若いな。年は幾つだ?」
先に口を開いたのは瀧だった。
「申し遅れました。徳富です。歳は18になります」
徳富の童顔が、緊張に強張る。
「18か。まだ18の女だというのに、こんな…」
「瀧さんだって似たようなものではないですか。まだ東機関に居た頃のご活躍は、局長からよく聞いております。」
瀧がまた、ため息をついて首を傾げた。けして浮かれた顔はしない瀧であるが、ずっと強張った顔で、虚勢を張るように瀧を睨み続けている徳富よりかは余裕のある態度を見せている。
「またこちらに戻ってはくれませんか?局長もそれを望んでるようですが…」
「断る」
徳富の頼みを瀧は即座に却下した。
「閉塞した現状をただ継続していく為に人を殺し続けるのは、俺はもう嫌なんでな。日本は緩やかに死につつあるんだ。ここらで変わらないと、本当に取り返しがつかなくなる。」
「その為にする事が、日本を裏切って中共に祖国を売る事なんですか!?中共に取り込まれれば今よりマシになると本当に思ってるんですか!?」
「俺は今の日本を変えたいだけだよ。中共はその為に利用しただけだ。日本を乗っ取らせはしない。この俺がさせない。ただこの国の中枢…もうどうにもならない腐った部分は取り出さないといけない。例え容共どもの手を借りてもだ。」
「……その中
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