第九話 叛乱への反旗
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る遠沢准尉は東機関の工作員でな、いや、元工作員なんじゃが、とにかく俺たちにとっちゃ厄介なんじゃ。しかし巻き添え食わすのはいささか乱暴じゃったの。まー、お前の事は嫌いじゃなかったけ、できるだけ殺したくはないんじゃ。じゃけやっぱりのう、生き残るチャンスをやるわ。脱出艇が一つ余っとる。それん乗ってこの艦から出てってくれたら、俺らはもうお前らにゃ手だしせんわ。まー、説明不足ですまんけどの、でも絶対、後になりゃ俺らのした事の意味が分かる。ほんじゃ、元気で、な。遠沢、お前ももう東機関じゃないんじゃけ、賢明な判断をしてくれ。以上。>
「…やった」
遠沢はすぐさま、プラットフォームの電子盤を操作し、プラットフォームに脱出艇を呼び寄せる。武士の情け、か。もしかしたら、これも嘘で、脱出艇が建御雷から射出された途端撃つのかもしれないが、しかしここに残っていれば100%、殺されてしまう。勿論、遠沢は残る。しかし、津村も長岡もこれから始まる"人でなし"同士の戦いになど関わるべきではない。彼らは生きるべきだ。真っ当に生きていくべきだ。ここは、本木を信じて、その情けに甘えさせてもらう。
プラットフォームに到達した脱出艇のハッチを開け、津村をその中に運び込む。操縦席で自動操縦を設定し、次に自分から立ち上がろうともしない長岡に肩を貸す。
「………んきになれるわきゃねぇだろ」
不意に、長岡が言葉を発した。次の瞬間、長岡の足に力が入った。自分の力で立ったかと思うと、肩を貸している遠沢を突き飛ばした。
「!!なにを…」
長岡はそのまま駆けていき、脱出艇のハッチを乱暴に、叩きつけるようにして閉める。そして制御盤の、発進のスイッチに渾身の拳を叩き込んだ。
バキッ!
スイッチが強く押し込まれすぎて割れる。
その勢いそのままに脱出艇の発進口が開き、津村だけを載せた、残り一機の脱出艇が艦外の空に射出されていった。
「あ…ああ……」
遠沢はその光景に言葉を失った。
長岡は息を切らして、しかし光の戻った目で艦外の空を見ていた。
―――――――――――――――――
「行きました。しかし、艇内には一人のみ。本木さん、長岡は、残りましたよ」
レーダー手の山本が、本木の顔色を伺うように言った。しかし周りが気にするほど、本木は気にはしていない様子である。四角い顔の無精髭をさすっていた。
「ま、残ったって事は俺らには従わんゆう事やの。殺すしかないわ。行ってこい。」
「おう。」
辻を中心とした何人かが、発令所を出て行く。
その脇には、武器庫から出してきた重火器も抱えられている。
本木は発令所の虚空を見つめる。そして目を閉じて、ため息をついた。
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「なッ…何でッ…何でこ
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