第2話 はじめてのせんとう及びブラジリアン柔術
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「パパスさん! パパスさんじゃないかっ!? 無事に帰ってきたんだね!」
「わっはっはっ。やせても枯れてもこのパパス、おいそれとは死ぬものか!」
おとうさんは友達がたくさんいる。色んなところにいる。今もぼくの知らないおじさんと、楽しそうに笑っている。
「フローラ! フローラはどこだっ!! デボラでもええでっ!!!」
サトチーにいさんは誰かの名前を叫びながら、走っていってしまった。
おとうさんはまだ話している。話し込むと長いんだ、おとうさんは。待っているのもおもしろくないので、ぼくは港を探検することにした。
だけど、小さな建物があるだけで、すぐに行く場所もなくなってしまった。いつもはサトチーにいさんと一緒だから、もっと色々楽しいのに。
気が付けば、橋の近くまで来ていた。向こう側に原っぱが見える。おとうさんにはいつも、一人で出歩いちゃ行けないって言われているけれど……少しぐらいなら良いよね?
わくわく、どきどきしながら橋を渡る。ぎしぎしって鳴る音がすごく大きい気がした。こんなに大きな音だと、誰かに気付いちゃうかな? 怒られないかな?
考えているうちに、ぼくの靴が土に触れた。
普段ならおとうさんや、サトチーにいさんが必ず一緒にいるけれど、今はいない。
不思議な別世界に行ってしまったような気さえする。
自然とぼくの足は進む。
どんどん進む。
気が付けば港からだいぶ離れてしまった。
…………。
少しだけ、怖くなった。
まるで地面がなくなったようにさえ思えた。
ぼくは港へ走って戻ろうとした、その時だった。
「ピギー!」
後ろからした声に振り返ると小さな水色のモンスター「スライム」が僕を睨み付けていた。おとうさんが一緒なら全然平気だけど、今ぼくはひとりだ。
逃げよう、と港の方へ再度走ろうと思ったけれど、そこにはもう一匹スライムがいた。前と後ろ、横にも1匹いる。逃げられない!
どうしよう、どうしよう。ぼくはどうすればいいのか、全然分からなくなった。
そんなぼくに向かって目の前のスライムが飛び跳ねてきた。
ぼくは思わず腰に下げていた木の棒で叩いた。とっさの行動だったけれど、うまくいった。スライムは目を回しているのか、動かない。
やった! そう思った瞬間背中に強い痛みが走った。ぼくは地面に顔から突っ伏した。
いたい、いたい、いたい! 泣きそうなほど、いたい!
忘れていた。一匹じゃなかったんだ。
「ピギャーッ!」
後ろから聞こえたスライムの叫び声にぼくは木の棒を放り出して、頭を抱えた。
けれど、いつまでたっても痛みはやってこない。そうっと目を開けると、そこには見知った背中があった。
「サトチーにいさん!」
「おうよ。頼れる
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